アルカン イソップの響宴(短調による12の練習曲Op.39より第12番)
- ナナサコフ(Nanasawa Articulates<98>)(8:16)○
さすがに技巧というかメカニックのキレでは他の追随を許さないというか、別の次元にいると言ってよい。
ただ鉄道エチュードのところでも書いたが、音的な魅力に欠けるのが惜しいところ。
第7、14、15変奏などは打ち込み音楽でならではの超絶技巧(?)が聴ける。
また最終変奏のアルペジオ記号がついた連続和音のところは、他の奏者ではほとんど単なる和音に聞こえるが、この演奏ではアルペジオの目覚しい効果が味わえる。
全体的にテンポが速く、タメや間が少ないので素っ気無く感じることも確か。
第9、10変奏などはアゴーギクや表情を付けて歌おうとしているがややぎこちない。
第6変奏のトリルや第18変奏の左手の非人間的な動きなどはいかにもコンピュータ演奏である。
音楽センスの点ではまだまだ人間様にはかなわないが、それでも魅力十分である。
- アムラン(Hyperion<94>)(8:40)○
模範的演奏。しなやかで潤いのある音。技巧が洗練されている。
特に第7変奏や第17、18変奏のような32,64分音符の急速な動きでの指回りの鮮やかさは人間技としてはほとんど限界点にあるだろう。
ただ第14、15変奏ではアムランにしては細部の明晰さに少し欠けるか。
- リンガイセン(Marco Polo<90>)(9:54)○-△
全体的に落ち着いたテンポでスピード感には欠けるが、端正かつ丁寧。音がきれいで明晰。派手な技巧はないがごまかしがなく正確。非常に好感が持てる。(爆演型演奏が好きな人には物足りないだろうが。)
ただ第22変奏(私の好きな変奏)などはもう少し速いテンポをとった方が曲の魅力が出ると思う。
- R.レーヴェンタール(ELAN<65>)(8:36)○-△
迫力という点ではこの盤が1番だろう。ただしそのぶん粗さも目立つ。
勢いはあるのだが、やや勢いに任せて弾いている感もある。
全体的に速めのテンポだが、第7変奏や第17、18変奏のような細かい急速な動きの変奏ではやや遅めのテンポ。ここはもう少しスピード感があってもよいか(下手に弾き飛ばされるよりはよいが)。
録音は古いが、ややデッドな音がかえって曲に合っていてよいかもしれない。
- J.ギボンズ(ASV<95>)(9:17)○-△
ギボンズは決して下手なピアニストではない(むしろかなりの技巧派)が、この曲ではアムランやナナサコフと比べると(ナナサコフと比べちゃいけないか)仕上げというか細部の詰めがやや甘い感があるのは否めない。第17、18変奏などではスピードは十分だが右手の粒の揃いがもうひとつ。
明るく力強い打鍵で曲の魅力は十分に引き出しているが。
- R.スミス(apr<77>)(8:58)△
技巧的にやや苦しい。テンポが揺れるところもある(もちろん鮮やかに弾いている変奏もあるが)。
最終変奏のアルペジオのついた連続和音をちゃんとアルペジオらしく弾いているところは(ナナサコフ盤ほどの迫力はないが)買える。
未記入盤
- M.ポンティ(VoxBox<70>)(8:52)
- J.ウレーン(SR Records<2004>)(10:08)(ブログ記事)
- ローマ(Challenge Classics<2001>)(9:08)(ブログ記事)
- A.ワイス(Brilliant<98,2007>)(10:12)(ブログ記事)
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