リスト ファウストワルツS.407(グノー)
- ディヒター(Philips<80>)(8:50)◎-○
力強さとスピード感のバランスをうまくとっている。主題の途中の右手オクターヴの素早い動きはちょっとぎこちないが、技巧のキレはなかなか。特に中間の緩徐部分の後のnon legatoでのAllegro vivace assaiのところのテンポはかなり速くて爽快。左手の重低音やグリッサンド部分でもまずまず「鳴らして」くれるなど、ツボを心得ている。最後の追い込みでの指回りもかなりのもの。
- S.バレル(apr<46>L)(9:23)○-◎
前半部分ではまだ抑えている(?)が、後半(緩徐部分の後)では驚くべきテクニックというか指回りを見せる(唖然とするほど)。
Allego vivace assaiの部分はディヒターよりさらにテンポが速く、よく聴き取れないほど。人間業としてほとんで限界点に達しているのではないか(まさにバレルの面目躍如)。
逆に緩徐部分はゆったりしたテンポで静かに歌っている(後半のために力を溜めている?)。
それにしても技巧のキレという点では文句なしに一番上だろう。音が良ければ1番に薦められる(それほど音が悪い)。もっとも、音が良くなればその分アラも目立つという可能性も否定できないが…。
- ティボーデ(Denon<84>)(9:47)○-◎
スピード感あふれる現代的なファウストワルツ。が、迫力(と下品さ)にはやや欠けるかもしれない。この曲は(特に後半の再現部分で)3拍子の1拍目の左手低音を下品なまでに派手に弾くのが1つの魅力だと思うのだが、それがなく、いやに上品である。また、ティボーデの趣味なのかグリッサンドの連発ところのもやけにおとなしい(ここはfffだけに思いきりブチかましてほしいところ)。しかしティボーデらしい技巧の安定性があり、完成度は高い。後年にDeccaに再録音したけど、録音はこちらの方が音が明晰で張りがあり(さすがDenonのPCM録音)、個人的にはこちらの方が好きである。
- A.マークス(Nimbus<87>)(10:38)○
丁寧。堅実。技術的に安定している。
全体的にゆったりとしたテンポで、その分フレーズに細かい表情付けがあってセンスを感じさせる。しなかやという言葉が似合う。
後半のグリッサンドもきれいに響かせる。
落ち着いた雰囲気のファウスト・ワルツが好きな人にはなかなかいいかも。
派手な技巧を聴かせる演奏の多い中にあっては存在意義のある盤だろう。
- ティボーデ(Decca<92>)(9:03)○-△
Denon盤と基本的には変わっていないが、技術的に熟練さが加わって多少洗練されている気もする。が、録音のせいか、Denon盤より音の線が細い感じがしてもうひとつ魅力に欠ける感がある。
- ワイルド(Vanguard<91>)(10:10)○-△
演奏はまあ普通だが、ワイルドの編曲が入っているのが特徴。手が空いたところで音を追加するという感じだが入れる音がどこかサロン風であまりリスト的でない。全体的に音ギレがちょっとよくない(ボヤッとした音になる)というか音の輪郭が少し曖昧な印象を受ける(雰囲気あると思う人もいるだろうが)。ヴィルトゥオーソタイプだけに鳴らすべきところは鳴らすなど、盛り上げるツボは心得ている。
- チッコリーニ(EMI<82>)(9:26)○-△
全体的に表現に清潔感があるというか、やや淡泊。あまり「見せつける」という感じがない。左手低音部はまずまず雄弁だが、グリッサンドはティボーデと同じくおとなしい。だがティボーデほどの技巧のキレがないのがややつらい。特に後半開始のAllegroのnon legatoのところがモヤモヤしているし(ここは私の好きなところ)、ラストでテンポを上げた時の右手の速い動きがややぎこちないというか安定性に欠ける。
- ハワード(Hyperion<89>)(9:22)○-△
右手の(特に高速での)ノンレガートでのタッチの均一性がやや欠けるせいか、何か技巧が安定していないというか危なっかしい印象を受ける。テンポも微妙に揺れる。ただ音の迫力は十分で(これだけがとりえ?)特に後半のグリッサンド連発は思いきり鳴らしてくれるのでスカッとする(ほとんどここを聴きたいがためにこの盤を聴くこともある)。
- ギンスブルク(Melodiya<70>)(10:32)○-△
どこと言って特に悪いところはないのだが、全体的にちょっと微温的。録音があまりよくないだけに、積極的に聴こうと思わせる特長が何か欲しいところ。演奏は意外と真面目でヴィルトゥオーゾタイプ(私が言うときは必ずしも誉め言葉ではない)ではない。左手の低音もグリッサンドも控えめ。
- カンパネラ(Philips<71>)(9:47)△
遅めのテンポで全体的にピリッとしないというかシャープさに欠ける。悪い意味で機械的というかセンスがないというか、ただ楽譜通りに弾いている感じ(特に緩徐部分)。技巧も特に弱いということはないのだが、キレというか凄みを感じない。特にコーダはややもたついている。左手の低音やグリッサンドはそれなりに鳴らしている。
- リベッタ(Agora<97>)(12:01)△-×
落ち着いたテンポで決して慌てない感じ。ペダルを控えめにしているせいか、あるいは録音のせいか乾いてパラパラした音がする。中間部はこのためあまり歌えていない。なのにテンポはかなり遅めなので間がもたない感じ。これでもっと粒立ちが安定していればいいのだが、なにかぎこちない(素人っぽい)印象を受けてしまう。後半はもっとボロが出ていて右手の高速音型がかなり怪しい。左手もおざなり。右手オクターヴだけはスムーズ。
未記入盤
- E.ペトリ(Pearl<36>)(8:43)
- リベッタ(VAI Audio<2000>L)(10:09)
- ロルティ(Port-Royal<90>L)(9:20)
- 赤松林太郎(虹工房<95>L)(8:07)
- S.バレル(Cembal d'amour<51>)(9:26)
- トリヨン(apr<2000>)(9:30)
- ハフ(Hyperion<2003>)(10:14)
- レスチェンコ(avanti classic<2007>)(9:18)◎-○(ブログ記事)
- ロルティ(Chandos<2013>)(9:27)
- リ・ソヨン(Naxos<2012>)(10:17)○-◎
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