ラヴェル 夜のガスパール
- ロルティ(Chandos<88>)(6:36/6:36/8:50)◎
ジャケット→
技巧にキレがあり、かつ音楽的。特にスカルボが良い。派手なことはしないが、音楽の流れが自然で、盛り上げ方というかデュナーミクのつけ方もうまい。タッチが明晰でしかも潤いがあるというかみずみずしい(指に吸盤がついている感じ)。模範的演奏と言ってもいいかもしれない。ポゴレリチほど病的でなく、ティボーデほど無機的でない。バランスがいい演奏。
- ポゴレリチ(DG<83>)(7:17/6:47/9:22)◎
後年のポゴレリチに見られるようなエキセントリックな解釈はないが、例によって一分の隙もなく細部まで磨きがかかっていて、その集中度には息苦しさを感じるほど。特に弱音に非常に神経を使っている感じ(特にオンディーヌの左手など)。いつもことだが、その場の気分で弾くようなところはなく、練りに練った演奏。
- ティボーデ(Decca<91>)(6:26/7:12/8:31)◎-○
ペダルを抑制し、やや乾いた軽めのタッチで歯切れがよい。曖昧なところがなく、スカルボでは左手の細かい動きがよく聞き取れる。表現は健康的でポゴレリチのような神経質なところがないが、逆にちょっとエチュード的というか機械的な感じがしないでもない。また音色の変化や表現の振幅は少なく、幻想性には欠けるかもしれない。清潔で古典的とも言えるが。
- 小山実稚恵(Sony<93>)(6:11/6:26/9:16)○
オンディーヌはかなり速めのテンポ(素っ気ないほど)でタッチも明快。まさにサラサラ流れる感じ。絞首台もそれほど弱音でなく、あまり神経質にならない。スカルボも骨太な音で迫力があるが、録音のせか音がやや大ざっぱな感じもして、もう少し繊細さも欲しい気はする。和音の強打でもちょっと打鍵が乱暴な気がしないでもない。
- リフシッツ(Denon<93>L)(7:34/6:29/11:30)○
オンディーヌもかなり遅めだが、スカルボが異様に遅い。しかしテンポが恣意的に揺れることはなく、1音1音がよくコントロールされていて、グールドの「熱情」ソナタをちょっと思い出す(あそこまで徹底していないが)。こんなに遅く弾いても音楽になっているというか十分説得力があるところはたいしたもの。16歳のときの演奏だが、この若さでこれほど凝った演奏ができるとは(しかもライヴ)恐るべき音楽性と言える。スタンダードな演奏ではない(音コンだったら通りそうにない)が一聴の価値あり。
- ベレゾフスキー(Teldec<94>)(5:46/5:57/7:57)△-○
オンディーヌは無茶苦茶テンポが速く、曲のイメージと合っていない気がするが、でも技術的にはちゃんと弾けている。絞首台も(終始弱音で通すのが普通だと思うが)結構ダイナミックスの幅をとって盛り上げようとする。スカルボも個性的。多少羽目をはずすというか、興に乗って演奏する感じがあり、部分的には凄い技巧のキレを見せることもあるが、細部のツメが甘いところもある。激しさのあまり鍵盤を叩く感じになることも。
- ロジェ(Decca<74>)(6:23/6:34/8:23)△-○
オンディーヌは速めかつ機械のように正確なテンポ。ファンタジーのようなものは感じないが、これがフランス的明晰性なのかも。録音のせいか音は軽くてこじんまりしている。スカルボはスピード感があって演奏は良さげなのだが、録音のせいか細部がボヤけてしまっているのが惜しい。アプローチとしてはティボーデと似ている感じ(やや無機的)。
- ババヤン(Connoisseur Society<92>)(7:05/7:24/9:21)△-○
オンディーヌは右手の細かい動きがクリアで悪くない。絞首台はかなり遅めのテンポだが1音1音よく吟味されており、ダラダラした感じはない。なかなかセンスがある。スカルボはちょっと個性的というかアゴーギクやデュナーミクに一癖二癖あり、いわゆる「聴かせる」演奏。ただ凝った表現の磨きがポゴレリチのレベルにまで達していないのが惜しい。
- W.ハース(Philips<64>)(6:03/5:27/9:08)△
オンディーヌはインテンポ、ややぎこちないところはあるが健康的でサクサク先に進む。絞首台もあまり神経質なところはない。スカルボはホールエコーが多いのかペダル過多なのかよくわからないが(多分前者)モヤモヤして細部がクリアでない。ただ、それを考えてもキレにやや欠ける感は否めない。音がちゃんと出ていないのでは?と思うところもある。
- ガヴリーロフ(EMI<78>)(6:35/5:23/9:12)△
オンディーヌは速いテンポで先を急ぐ感じ。何かせわしない。また細かい音型での粒の揃い方がイマイチ(特にクライマックスの手前の重音で何度も降りてくるところ)。絞首台は情感を込めようとしているのだが何か上滑りして(少なくとも私には)しっくりと来ない。スカルボはやや切れ味が鈍い。細部の磨きももう一つ。後半は身振りの大きな表現で盛り上げてはいるが、荒削りで完成度があまり高くない。
- フランソワ(EMI<67>)(7:07/5:10/9:35)△
オンディーヌはゆったりしたテンポかつ乾いたパラパラとした音で、細かい動きがよく聞こえる(なにか素人っぽい演奏だが)。スカルボは多少ぎこちないというかゴツゴツしている感じがするが、流麗な演奏を聴き慣れていると逆に新鮮かも。左手の細かい動きなど、普通はもっと滑らかに弾くと思うのだが、それが1音1音クッキリしていてなかなか面白い。技術的にはあまり洗練されているという感じではないが。
- M.ルディ(EMI<87>)(6:44/5:46/9:19)△
オンディーヌは良く言えば弱音が柔らかいが、悪く言えばちょっとなよっとしていて、もう少し溌剌さや硬質さが欲しいところ。絞首台も同様。くぐもった音で通しているが、透き通った音色があってもいいかも。スカルボはリズムが覇気に欠ける。音が丸みを持っていてタッチの切れ味も乏しい。最初の方の右手の16分音符の音階的動きの部分もちょっとぎこちない。ダイナミックというよりスタティック路線な感じなのだが、意図的にそうしているとは思えず、何か中途半端で焦点が定まらない感じ。
未記入盤
- J.スワン(Hunt<>L)(6:35/5:15/8:18)
- エル=バシャ(Forlane<94>)(6:59/5:27/8:58)
- ケフェレック(Virgin<92>)(7:03/7:07/10:09)
- ペルルミュテール(Nimbus<73>)(6:30/6:15/9:01)
- ポゴレリチ(Lucky Ball<83>L)(7:09/6:24/8:22)
- ペルルミュテール(Vox<55>)(6:26/6:06/8:42)
- N.アンゲリッチ(Lyrinx<97>)(7:40/7:15/7:50)
- A.Rangell(Dorian<85>L)(7:09/5:47/9:13)
- E.Himy(Ivory Classics<2002>)(7:00/6:30/9:14)
- 野島稔(Reference Recordings<89>)(6:24/6:08/9:30)
- ミケランジェリ(BBC<59>)(6:03/6:00/9:55)
- A.タロー(HMF<2003>)(6:31/6:02/9:38)
- Frascone(MRL7<2001>)(6:30/6:20/9:59)
- N.コール(Decca<99>)(6:21/6:19/8:32)
- J.ウレーン(SR Records<2004>)(8:33/7:53/11:13)(ブログ記事)
- ティエンポ(EMI<2005>)(6:05/4:55/9:40)◎(ブログ記事)
- ロンクィッヒ(ECM<2002>)(6:40/7:26/9:31)(ブログ記事)
- オールソン(Cesky Rozhlas<73>L)(6:32/6:32/8:38)(ブログ記事)
- ラキッソヴァ(Sony<2001>)(6:52/6:01/9:15)(ブログ記事)
- バルト(Ondine<2006>)(7:36/6:53/8:44)(ブログ記事)
- F.ケンプ(BIS<2006>)(6:26/6:28/9:28)(ブログ記事)
- シュフ(Oehms<2008>)(6:45/6:39/9:16)◎(ブログ記事)
- デシャルム(audite<2008>)(6:47/7:06/9:26)(ブログ記事)
- ウルスレアサ(Berlin Classics<2009>)(8:25/7:27/11:42)(ブログ記事)
- グロヴナー(Decca<2011>)(6:35/5:30/8:41)◎(ブログ記事)
- ヴィニツカヤ(naiive<2011>)(6:43/6:31/9:46)(ブログ記事)
- スドビン(BIS<2009>)(6:33/6:22/9:26)(ブログ記事)
- ヌーブルジェ(MIRARE<2013>)(7:13/6:50/10:20)
- シュヴィッツゲーベル=ワン(Aparte<2013>)(6:42/5:44/9:08)
- アルゲリッチ(Doremi<60>L)(5:27/4:43/8:07)
- アルゲリッチ(DG<67>)(5:31/4:43/8:05)
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