リスト 小人の踊り(2つの演奏会用エチュードS.145より)
- ペライア(Sony<91>)(2:55)◎-○
ジャケット→
第1主題部分(6/8拍子のところ)はやや流れが硬いが、第2主題部分(9/8拍子のところ)はペライア一流の玉を転がすような粒の揃ったタッチが気持ちよい。
スピード感こそそれほどでもないが、1音1音の粒立ちが明確で、細部まで隙が無い。
第2主題部分での左手も生き生きしている。
クライマックス部(第2主題の最後の繰り返し)も力強さ・スピード感があって盛り上げ方がうまい。
全体的に教科書的、優等生的ではあるが、技術的安定感がある。
- S.バレル(Pearl<36>)(2:33)○-◎
テンポがかなり速く、間も少ないため多少せわしない感じもするが、タッチも安定しており、これだけのスピードで弾いてのける技術には舌を巻く。
特に第2主題部分の16分音符の細かい音型のスピードと滑らかさはいつもながら感心する(人間はここまで速く正確に弾けるのか、という様を見る思いがする)。
解釈的にもったいぶったところはないが、逆に素っ気ないというか、単にスピードを追い求めているような感じもしないでもないが。
音がもっと良ければ…。
- クズミン(Russian Disc<92>)(2:41)○-◎
軽めのタッチ、速めのテンポで鮮やかに弾き切っており、非常に流麗。手慣れた感じがする。
表現的にもちょっとしたアクセントやアゴーギクの変化などの味付けがある。
ただ、雑というのではないけれど、細部の完成度をもっと上げるというか、推敲を加えてさらに練った演奏にすることもできる(それだけの技術はある)のではないかという思いもちょっと残る。(彼はそういうタイプの演奏家ではないのだろうが。)
あと、クライマックス部分で(その前のstringendoで加速しすぎるせいか)テンポが少し落ち着いてしまう感じがするのは惜しい。
- S.バレル(apr<46>L)(2:30)○
スタジオ録音とテンポも解釈もほとんど変わりなく、相変わらずの超絶技巧だが、残念ながら音はさらに悪い。
ライブだが傷はほとんどなく、実演でも同じように完璧に弾けるのはたいしたものである。
- オグドン(EMI<67>)(2:14)○
テンポが無茶苦茶速い。あまりに速いテンポで、細部がややよく聴き取れなくなるところがあるが、それでもだいたい弾けているのは感心する。
単にスピード限界に挑戦しているだけという感じがして、その意味でアマチュア的だが、オグドンの面目躍如とも言える。
個人的には丁寧で完成度の高い演奏が好きなのであるが、彼に「自制心」や「丁寧さ」を求めるのは、角を矯めて牛を殺すことにつながるのかもしれない。
- E.ペトリ(Pearl<29>)(2:38)○
スクラッチノイズというかサーフィスノイズがかなり大きめで、音質的にはかなり聴きづらい。
しかし技術的にはまったく問題なし、というかかなりの出来。
スピード感もあり、タッチも粒が揃って、ケチをつけるところはあまりない。
(こうやってみるとこの曲は昔の人の方が概して上手い気がする。今は昔ほど弾かれることが少なくなったせいかもしれない。)
- シフラ(EMI<77>)(2:44)○
前半は彼にしては結構大人しいが、クライマックス部の前あたりから彼らしいパフォーマンスが加わってきて、クライマックス部はほとんど「こんな曲だったっけ?」状態になる。
技術的には例によって(ハッタリ的なところがあって)あまり洗練されているとも思えないが、この編曲(ともいうべきデフォルメ)は一聴の価値がありそう。
- Plagge(Tacet<95>)(3:02)○
特に優れた技巧を見せるわけではないが、タッチは非常に安定していて技術的には悪くない。(ペライア系の演奏と言える。)
ただ第2主題部分でのスピード、力強さの点で少々物足りない。
第1主題部分で力を溜めて、第2主題部分で放出する、というのがいいと思うのだが、第2主題に入ってもおとなしいままの感があって、少しフラストレーションが溜まる(最後はやや放出するようだが)。
- ワイルド(Vanguard<91>)(2:49)○
第1主題部分は流麗なのだが、第2主題部分が少し硬いというか、打鍵が多少乱暴な感じがある(特に左手)。
もう少し精妙にコントロールされたタッチを望むのは贅沢かな。
表現的にはこなれていてツボをよく押さえているが、特定の音にアクセントをつけたり急激なデュナーミクの変化など、ややケレン味もある表現もある。
特にコーダのところはやや鼻につく感じがある。
- ラフマニノフ(Piano Library<25>)(3:04)○-△
第1主題部分の終わりでかなりリタルダンドしたり、拍の始めに噛み締めるようにアクセントを付けたりと、リズムやアゴーギクの面ではやや癖があるが、第2主題部分ではうまく力を放出するなど、全体的に(やや大味ではあるが)溌剌として勢いがある。
音は録音年の割にはよい方だが、高音が少しキンキンするところがある。
- プレトニョフ(DG<97>)(3:11)○-△
プレトニョフらしい細かい工夫は多少盛り込まれているものの、そのひねりが(個人的には)しっくりこない。
特にこの曲はスピード感と細かい音型での粒の揃いが重要なのだが、表情に工夫をしているためにかえってそれが損なわれているように聴こえてしまうのかもしれない。
リズムもやや粘るような感じである。
技術的には水準はもちろんクリアしているが、凄みを感じさせるほどではない(こちらが期待しすぎ?)。
- フィオレンティーノ(apr<66>)(2:48)△-○
第2主題での16分音符が非常に流麗で手馴れた感があるが、やや勢い任せっぽいところもなきにしもあらず。
語尾などが幾分曖昧に聴こえるところもある。
クライマックス部分はテンポは速いのだが、音量が小さいためやや盛り上がりに欠ける(ここは溜まった力を一気に放出してほしいところ)。
第1主題の前打音が単なる重音のように聴こえる(他の演奏も多かれ少なかれその傾向はあるが)のも少し気になるところ。
- アンダーソン(Nimbus<95>)(3:13)△-○
テンポが遅めで、音量も全体的に抑えている。よく言えば繊細、悪く言えばナヨっとした感じ。
(最後のクライマックスを除いて)第1主題部分より第2主題部分の方が音が弱くなるのは大いに違和感がある(定石と反対)。
ただタッチは丁寧でそこは好感が持てる。
こういうタイプの演奏はやや珍しいだけに存在価値はあるかも。
- アルダシェフ(Supraphon<91>)(3:01)△-○
第1主題部分はややモッサリしていてもっと軽さが欲しい。第2主題部分もPlaggeと同様、おとなしい。
第2主題部分での左手の和音連打も弱く、もう少し生き生きと出して欲しいところ(個人的趣味)。
技術的にはあまり問題ないが、全体的ちょっと覇気、生気に欠ける。
- アラウ(Philips<70>)(3:13)△
極めてオーソドックスな演奏だが、テンポが遅めでどこか安全運転といった感じ。
タッチにもうひとつ溌剌としたところがないもそういう印象を受ける一因だろう。
粒の揃いも特に第1主題部分では完璧とは言いがたい。
- ルバッキーテ(Lyrinx<96>)(3:14)△
タッチの均一性(特にアーティキュレーション)の面で不満が残る。ややパタパタした感がある。
テンポが微妙に揺れる(揺らす?)ところがあるのも気になる。
解釈というか表現には自己主張があるようだが、ややひとりよがりに感じられる(というか私の好みに合わない)。
- Dichamp(Lyrinx<98>)(3:00)△
第1主題部分のタッチがなにかぎこちない感じ。滑らかさに欠ける。
リズムもやや重く、躍動感、推進力というものがあまり感じられない。(最後は少し盛り上げているが。)
また第2主題部分で左手が弱いというかあまり聴こえないのは痛い。
- ハワード(Hyperion<95>)(3:07)△
ハワードによるリストのエチュードはどれも何か危なっかしいというか怪しい感じが漂うが、これもその嫌いがある。
技術的に破綻しているわけではないが、タッチの揃いがイマイチなため不安定な感じがつきまとう。
第2主題部分ではうまく力を放出するなど、表現のツボは押さえているだけに惜しい。
- ボレット(RCA<72>)(3:15)△
全体的に落ち着いたテンポというか、ちょっと落ち着き過ぎ。
このテンポで弾くのならば粒の揃い、タッチのコントロールをもう一段完璧にしてい欲しいところ。
第2主題部分で変にアクセントをつけるせいか打鍵が乱暴に聴こえる。
もうひとつ洗練されていない感じ。
- チェルカスキー(Pearl<49>)(2:57)△-×
タッチの安定性、粒の揃いがもうひとつ。(音が抜けているように聴こえるところがしばしば。)
スピード感もあまりなく、ぎこちない感じがする。
音質も良いとは言い難く、全体として美点はあまり見出せない。
未記入盤
- W.ハース(MDG<69>L)(3:38)
- シフラ(Hungaroton<55>)(2:42)
- エコノム(Suoni e Colori<80>)(2:55)
- S.バレル(Cembal d'amour<51>)(2:35)
- ウォルフラム(Naxos<2003>)(3:12)
- トリヨン(apr<2001>)(2:54)
- D.ワイルド(EMI<68>)(2:57)
- ブレハッチ(accord<2005>)(3:02)
- M.ルディ(EMI<89>)(2:53)
- ブゾーニ(Avi)(2:58)ピアノロール/アンピコ・ロールNo.51364
- フラスコーヌ(TRANSPORT<2006>L)(3:00)(ブログ記事)
- トリフォノフ(DG<2015>)(2:51)
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