ヒンデミット ピアノソナタ第3番(1936)
- E.Pace(danacord<2001>L)(4:17/2:48/4:39/3:56)◎
ジャケット→
2001年フスム音楽祭ライヴ。
全体的に作曲者指定より速めのテンポをとるが、それによってピアニスティック(技巧)な面白さを前面に出している。
特にフーガは、このテンポで最後まで持つのか?と思わせるほどのスピードだが、最後まで鮮やかに弾ききっている。
(その分、対位法の妙などをじっくり味わうのには向いていないのかもしれないが。)
それでも緩急や経過句での変化など、押さえるべきところはしっかり押さえている。
第2楽章の細かい走句での洗練されたタッチもよい。
全体的にさすがにフスムのハイライトCDに収録されるだけのことはあるという感じ。
ライヴだが瑕はほとんどない。
ただし最初にこの盤に聴きなれてしまうと、他の(普通の)演奏がスピード感的に物足りなく感じる危険があるかも。
- グールド(CBS<66>)(4:37/2:27/6:02/5:01)○-◎
「ヒンデミットは現代の数少ない真のフーガの名手である」と、グールド自身、ヒンデミットのフーガを高く評価しているだけに、やはり終楽章のフーガが聴きもの。多声処理が明晰だし経過句での表情の変化も面白い。
ただ(彼の別の音源と比べると)少し慎重というか落ち着き過ぎ(躍動感に欠ける?)という感じがしないでもない。
(彼のこのフーガの録音では、特に躍動感やメリハリという点でLDに映像付きで収録されているものがベストだと思う。ちなみにその演奏時間は4:18。ここで視聴できる。)
第2楽章の急速な走句で見せる指さばきも見事だが、ちょっと騒々しく感じないでもない(もう少し精妙さが欲しいところ)。
また(特にロマン派以降の曲での)彼の他の演奏と同様、線的な面白さは無類だが垂直方向の響きの美しさにやや欠ける面があるのは否めない。
第3楽章の再現部は少しテンポを落とし過ぎというか、少しもったいぶった感じがする。
- グールド(Music&Arts<68>L)(4:15/2:36/5:50/4:51)○-◎
放送用ライヴ。
コンセプトは66年のスタジオ録音とあまり変わらないが、ライヴということもあってか、アーティキュレーションや強弱、内声の出し方などによりメリハリがあって、いわゆるサービス精神がある演奏になっているという印象。
ただ音質が66年盤に比べて若干悪い(ややボケた音)のと、フーガが少し明晰性に欠ける感じがあり(録音のせいかも)、総合的には一長一短という感じ。
- H.ペーターマンドル(Marco Polo<90>)(4:37/3:17/5:17/5:02)○-△
すっきりしていて音もきれいだが、やや微温的というか大人しい。テンポも中庸。
Paceやグールド盤がやや特殊だけに、オーソドックスな曲の姿が知りたいという人にはとりあえずよいのかも。
ただし(誠実ではあるが)彼らほどの技術的な冴えはない。
終楽章のフーガで、第3楽章のフガート主題が出てくるところでテンポが遅くなってしまうのは残念。
(と言ってもグールドとPace以外の盤は多かれ少なかれここでテンポが落ちるので、あるいは解釈なのかもしれない。)
- K.Randalu(MDG<97>)(5:03/3:17/5:19/5:05)△
1〜3楽章はそれほど悪くないのだが、この曲のハイライトとも言うべき第4楽章がもうひとつ。
ペーターマンドルと同様、途中でテンポが落ちるし、その後のテーマが重なるクライマックス部分もキレに欠ける。
第2楽章もかなり安全運転のテンポでスピード感は皆無だが、丁寧に弾いているということで何とか許容範囲というところ。
- B.ロバーツ(Nimbus<95>)(4:44/2:59/4:57/5:09)△
第1楽章の急速部分で(技術的問題からか)いきなり変なルバートが入ったりして、これはどうなることやらと思ったが、第2楽章などは、それほどひどくない。
だが終楽章ではやはりテンポが揺れるというか難所で妙なタメが入ったりしてしまってモタツキ感が強い。
- ワイルド(Pearl<48>)(4:26/2:45/5:13/4:12)△
音質がかなり悪いため、音が混濁し、靄の中を進んでいるかのよう。
ややロマンチックな解釈で、表情などはよく出しているのだが、細部がもうひとつキッチリしていないというか、緻密さ・丁寧さに欠ける感じがある(特にフーガ)。
第2楽章は出だしなどヴィルトゥオーゾタイプらしいキレを見せるのだが、中間部の左手が細かく動くところでテンポが落ちてしまう。
- ワイルド(Ivory Classics<2000>)(4:13/2:50/4:19/4:09)△
48年版と違って音質はよいが、その分技術的な粗(タッチの不安定さや粒の不揃い)が顕になってしまった感じ(特に第2楽章)。
フーガもスピード感があるのだがやや勢い任せというか、タッチやテンポが十分にコントロールされていない感が強い。
- S.Mauser(Wergo<92>)(5:02/3:10/5:38/4:56)△-×
1、3楽章はそれほどでもないが、2、4楽章は技術的にかなり苦しい。
第2楽章は遅めのテンポをとっているにもかからわずどこか心許ないし、終楽章のフーガも部分的にテンポが走るし、譜面を音にするのが精一杯で声部の弾き分けまでやる余裕がない感じ。
未記入盤
- ザイベルト(cpo<2005>)(5:06/3:12/5:21/4:33)
- Sheludyakov(Phoenix<2006>)(4:57/3:05/6:10/5:04)(ブログ記事)
- ベッカー(Hyperion<2013>)(4:26/3:00/5:18/4:37)
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