リスト ハンガリー狂詩曲第6番
- アルゲリッチ(DG<60>)(6:19)◎-○ ジャケット
技術的には一番満足できる。
特にフリスカの連続オクターヴのタッチの安定性・コントロールが抜群(この曲は個人的にはこの連続オクターヴの技術安定性、特にタッチの揃い方が最重要ポイントである)。しかもスピードがある。ただし左手オクターヴのところでテンポが速まってしまうのは、テンポの一貫性という意味で少し疑問。
解釈は明るく健康的だが、ラプソディックな感じは少ない。
'60年録音だが音がよいのはこの頃のDG録音のよいところ。
- ギレリス(Dante<38>)(6:05)○-◎
フリスカの連続オクターヴは高度に安定。スピードもある。(よい意味で)機械のように正確とう感じ。
解釈は全体的に思い入れが少なくすっきり流れる(なおPresto部分の繰り返しは省略)。粘らずに淡泊。左手などでもう少し色気を見せてもいいかもしれない。
残念なのは音がかなり悪いこと。これで音が良ければベストにも推せる。
- シドン(DG<73>)(6:25)○-◎
端正で品がよい。清潔感がある。
技術的にも(決してヴィルトゥオーソ的ではないが)安定している。ある意味で模範的・教科書的。
ラッサンの歌い方、特に間のとり方なども感じが出ていてうまい。
フリスカの連続オクターヴをきちんと丁寧に弾くところは、勢いに任せて弾き散らかすのに比べればずっと好感が持てる。
ただオクターヴが左手に移ったところで(安全第一のあまり?)テンポが急に落ちるのはちょっと興がそがれるかな。
- ホロヴィッツ(RCA<47>)(6:53)○
前半(Tempo giustoやPrestoの部分)は低和音の強調はあるもののホロヴィッツにしてはデフォルメが少なく意外と大人しい。ラッサンはたっぷりと歌う。
フリスカの連続オクターヴのタッチはまずまず安定しているが、左手をやたら強調したりして、お世辞にも品があるとは言えない(轟音という感じ)。
彼の編曲も少し加わっていて、これは結構面白い。
音はよくない。
- ディヒター(Philips<80>)(6:47)○
残響が豊かなせいもあるが、低和音を強調したりして、スケールが大きい印象を受ける。その分やや鈍いというかシャープさが少ない感じがしないでもない。ラッサンもかなりゆったりしているが、ちょっともったいつけ過ぎかも。
フリスカはゆっくり始めて加速するのではなく、いきなり速め。
連続オクターヴの安定性もまずまず。
ただ最後のダブルオクターヴがなぜか少し硬い。
- バルトー(EMI<88>)(7:12)○
アーティキュレーションやデュナーミクなど、随所に小細工というか味付けが見られる。
アゴーギクもかなり自由だが、クズミンのような気ままな感じというより、面白く聴かせようというサービス精神の現れか。
フリスカは最初かなり遅めでそれから加速していく。ここに限らずテンポの変化もユニーク。
残念なのはフリスカの連続オクターヴでタッチの安定性をいまひとつ欠くところ。
なお彼の編曲もちょっと加わっている。
- ヤンドー(Hungaroton<89>)(7:32)○-△
リストゆかりの楽器での演奏。
前半のPrestoの部分でfの和音をやたらにぶっ叩く感じがして、しかもがさつ(雑音成分が多そうな)な音がしてちょっと耳につくが、これは楽器のせいだからしかたないかも。
ラッサンはかなり遅めのテンポだが、淡々としていてあまり歌う感じではなく、やや物足りない。
フリスカの連続オクターヴは安定している。
- クズミン(Russian Disc<92>)(6:03)○-△
この曲に限らないが、クズミンの演奏はよく言えば自由で即興的、悪く言えば気分任せ、好き勝手という印象を受ける(多分ジャケットに載っている風貌にも影響されているのだろう(笑))。Prestoの部分などは何か投げやりな雰囲気すら漂う。
というわけでラッサンのところまでは非常に自由なアゴーギクで彼らしいが、フリスカの部分は意外とおとなしい。軽いタッチで、特に猛スピードというわけでもなく、低音を強調するわけでもない。
技術的にはまずまず安定。
- シフラ(Aura<63>L)○-△
やりすぎ。スタジオ録音盤よりさらにデフォルメが激しいが、タッチの不揃いさはそれほど気にならない。
終盤スピードを上げようとしているが、最初から飛ばしているためか上がり切らないのが…。
フリスカでは最初から左手をやたら強調するが、あまりセンスを感じない。
- ヤンドー(Naxos<97>)(7:08)△
解釈的には、低和音の強調はあるものの非常にオーソドックス。
ただ全体として技術的にもう少しキレが欲しいところ。
フリスカの連続オクターヴは少し苦しさを感じるところがある。Hungarotonの録音ではそういうことはあまり感じなかったが、こちらでは少し気になるのは、楽器のせいか、あるいは衰えなのか。
- シフラ(EMI<68>)(6:18)△-×
出だしからシフラらしいかなり自由というかやりたい放題のアゴーゴク。
出だしのTempo giustoの部分の最後の即興的なパッセージではこれみよがし的に重低音を轟かせる。
叩き付けるようなタッチで、洗練されているとは言い難い。
フリスカの連続オクターヴは明らかに粒が揃っていない。
技術的な細かいところが気にならない人には楽しめるかもしれないが…。
未記入盤
- フィオレンティーノ(apr<66>)(7:03)
- V.リャードフ(Real Sound<99>)(7:13)
- A.ボロフスキー(Pearl<37>)(6:42)
- チェルカスキー(Pearl<49>)(6:08)
- イオウデニチ(HMF<2001>L)(6:47)2001年ヴァン・クライバーンコンクールライヴ
- シフラ(Hungaroton<56>)(6:54)
- デ=ワール(Vanguard<87>)(7:07)
- ジャニス(Philips<52>)(7:09)
- ギンズブルク(Philips<47>)(5:52)
- ヴァシャーリ(DG<58>)(7:12)
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