ウェーバー コンツェルトシュトゥック ヘ短調Op.79
- デミジェンコ/マッケラス/スコティッシュso.(Hyperion<94>)(15:49)◎-○
ジャケット→
全体的に技巧が冴えている。特に第4部(Piu mosso〜Presto giojoso)はキレまくりという感じで、速めのテンポにもかかわらずアルペジオや音階的パッセージ等の細かい動きが非常にクリア。メリハリもあって、後半のダブルオクターヴをバリバリと弾くところなど、爽快感がある。それに比べると第1部(Larghetto ma non troppo)は歌うべきところがあっさりして少し物足りない。特に最初のピアノの入りは(fでもあるし)もう少し低音を響かせて欲しいところだが(個人的趣味)、軽めのタッチでサラッと流している。それでもその後の音階的に降下するところではスタカートを強調したりと、表現意欲に溢れている。
- グールド/マクミラン/トロントso.(Music & Arts<51>L)(15:30)◎-○
グールドがヴィルトゥオーソぶりをもろに出した演奏。もちろんケレン味のあるような表現ではなく、ストレートに突っ走る感じで、猛烈なスピードで弾かれた彼のモーツァルトやベートーヴェンを思い出させる。特に第2部(Allegro passionato)は爆走と言ってもいいくらで、(やや傷もあるが)他のすべの演奏が物足りなくなるくらいの迫力がある。第1部での歌い方もセンスに溢れている。第3部(Tempo di Marcia)では、グールドの嫌いなはず(?)のグリッサンドも(さすがにこの曲のポイントだけあって)ちゃんと弾いているところが面白い。ある種若気の至りという感もする演奏だが、でもグールドも後年、この録音を「グレン・グールド・ファンタジー」の中でも使っているので、本人も結構気に入っているのだろう。なお、ラッカー盤から復刻したため、スクラッチノイズなどが目立ち、音はかなり悪い。
- プレトニョフ/ロシア国立o.(DG<96>)(15:43)○
第1部最初に主題をピアノで弾くところで、左手をスタカート風に目立たせるなど、プレトニョフらしい工夫(小細工)を見せるが、それ以降はそれほど変わったところはない。技巧もキレはまずまずだが、(こちらが期待のしすぎなのか)驚くほどではないか。ただし例によってときどき(低)音を足すのは彼らしいところ。特に第3部のグリッサンドはかなり派手に響かせる。第4部はデミジェンコ並みの速いテンポで、指回りはさすが。ただデミジェンコほどメリハリを付けないせいか(デミジェンコが付け過ぎ?)、彼ほどのインパクトはないかも。
- レーゼル/ブロムシュテット/シュターツカペレ・ドレスデン(Deutsche Shallplatten<84>)(17:04)○
これといった特徴はあまりないが、技術的に安定していて、解釈もオーソドックス。適度な力強さやスピード感があって、キメるべきツボは心得ている感じ。ただし第1部は表現が真面目すぎるというか、もう少し色気を出してもいいところ。
- ブレンデル/アバド/ロンドンpo.(Philips<79>)(17:23)△
第1部はかなりゆっくりしたテンポ。それでも途中の連続アルペジオがあまりクリアでないのはちょっと不満。第2部に入っても技巧的パッセージが少しもたついているし、迫力にも欠ける。あるいは録音のせいなのか、細かい音型がやはりクリアに聞こえない。第4部になってだいぶ持ち直してきているが、ffでの力強さに欠けるし、やはり頻出するアルペジオ風の細かい動きでの音の粒立ちがあまりはっきり聞こえないのがイマイチ(この曲のポイントなのに)。
- タン/ノリントン/ロンドン・クラシカラル・プレーヤーズ(EMI<94>)(16:31)△-×
時代楽器による演奏。音が素朴というよりはむしろ貧弱。迫力がないことこの上ない。それを補うような軽快さやスピード感があればよいのだが、それもなく、音も平板で魅力に欠ける。(実を言うと、この曲に限らず時代楽器によるピアノ協奏曲は、オケとのバランス上、独奏楽器の音がひっこんでしまうため、どうも私には楽しめない。独奏曲や室内楽曲は好きなんだけど...。)
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