リスト メフィストワルツ第1番S.514
- エコノム(Suoni e Colori<80>)◎-○
ジャケット→
スピード感はもちろんだが、それに加えてダイナミズム、勢い、躍動感といったものが横溢している。
マツーエフ盤がどこか「マシーン」という感じがするのに対し、エコノムの演奏はどこかもっと人間臭さがある。
その分精密機械という感じではなく、ややもすると細部(語尾)がどこか不明瞭になる感じがときどき見られるが(重音トリルではリズムに少し違和感あり)、
表情、特に強弱の付け方はより生き生きとして音楽的。
跳躍部での和音連打の迫力は特に印象的。
その前の部分では勢い余って(?)1小節多く弾いてしまっていたりするところもあるが、これはご愛嬌といったところ。
- マツーエフ(Sacrambow<98>)(11:03)◎-○
より速く、より強く、より正確に、じゃないけれど、この曲の演奏がスポーツ競技だったら1位をとれそうな演奏(一応誉め言葉のつもり^^;)。
特に序奏から主部にかけてのスピードは(やや直線的な感じもするが)特筆に価する。
純粋に技術的な面では最高レベルにあると言って間違いない。
根がロマンチックなだけに、中間部の感情部分の歌い方も(強い個性はないが)堂に入っている。
テンポが微妙に揺れるというか、速いテンポを維持できなくて部分的にテンポを落とすような感じがときどきある(これは浜松コンのときも思ったことだが、彼は一定のテンポの持続ということをあまり気にしない人かも)が、全体的にはそれほど気にならない。
欲を言えばコクの面でもう少し深みがあればいいけど(そういうものを求める曲でない?)、とにかく聴いていて爽快感がある。
- ルガンスキー(Victor<91>)(12:03)◎-○
スピード感がありスマート、適度な力強さもある。技術的にも欠点らしい欠点がなく、模範的演奏とも言える。解釈もごくオーソドックスで、羽目をはずしたり色気を出したり、そいういう(悪い意味での)名人芸的なところがない。何か無色無臭というか蒸留水のような感じ。唯一とも言える欠点は中間部(夜想曲風のところ)がモタれ気味なこと。彼は(他の曲を聞いても)どうも音楽性の点で疑問符が付くところがあると思っているが、それがここに出ている感じ。テンポをかなり遅めにとって雰囲気を出そうとしているが、ただ単に遅くなっているだけという印象を受ける。しかし技巧的には既に完璧とも言え、(19歳のときの演奏だが)こんなに若いのにこんなに完成されていて後はどうしちゃうのだろう、と思わずにいられない。
- プレトニョフ(Melodiya<88>)(11:43)○-◎
冒頭部分の、5度音程で音を重ねていく部分(ヴァイオリンの調弦を模倣しているところ)で打鍵に余裕があり、音が均一に重なっていきかつよく響くのが魅力(音が重なるにつれて打鍵に余裕がなくなる演奏が多い)。この部分がこの演奏の白眉と言ったら言い過ぎか。その後はプレトニョフにしては技術的にも解釈的にもまあ普通。クライマックスの跳躍部分での和音連打が軽いタッチになる彼の解釈かもしれないが迫力に欠ける。
- タラソフ(A&E<89>)(11:18)○-◎
音(特に高音)が非常にきれい。流れが自然でかつ迫力がある。特に中間部の手前のオクターヴで駆け上がるところはスピード感がある。中間部の歌もセンスを感じる(ここらへんがルガンスキーとの違いか)。ただ跳躍部の和音連打で最後の和音がルーズになるというか、出きってないところがあるのがちょっと気になる。全体的に素直な音楽性と確かな技巧がうまくマッチした感じ。
- タラソフ(fontec<89>L)(11:03)○-◎
'89日本国際音楽コンクールライブ。スタジオ録音の約2ヵ月後の演奏。基本的にスタジオ録音と同じだが、それよりダイナミクスや緩急の幅が大きくなるなど、よりライヴらしい熱気のこもった演奏となっている。ライヴだが瑕はほとんどない(跳躍部での和音がルーズになる点もいく分改善されている)。完成度の高い演奏。
- ハフ(Virgin<87>)(10:43)○-◎
音に張りと力強さがあり、技術も高度に安定している。冒頭部分もかなりよい。中間部の始めの方で右手が細かく上昇する稿を使わないでシンプルな方を弾くのは最近のピアニストでは珍しい。後半クライマックス部はややルバートが多い(インテンポで弾けないのをごまかすためでなく、解釈のようだが)のは少し気になるとは言え、迫力は十分。跳躍部分での和音連打がよく響く。
- ワイルド(Vanguard>)(10:39)○-◎
序奏部から主部に入るまで(入ってからも)ずっとインテンポなのが(管弦楽版みたいで)非常に面白い。(楽譜には特にテンポを変える指定はないので、他のピアニストももっとこういう風にやればいいのにと思う。)個人的にはここだけでも聴く価値がある感じ。前半部、中間部もなかなか良いのだが、後半部の跳躍部分があからさまにスローテンポなのはちょっと白ける(他の部分は普通なのに)。ラスト(中間部も少し)はやはり(多分ワイルド自身による)編曲が入っている。
- A.ロマノフスキ(Divox<2001>L)○-◎
2001年ブゾーニコンクール優勝者リサイタルライヴ。
ライヴだけに細かい瑕は結構あるものの、エコノム盤と同様、打鍵に勢いがあり躍動感に溢れる。
テクだけでなく音楽センスも光っており、特に緩徐部分にそれが現れている。歌い方が上手く、自然でかつグッとくるものがある。
併録曲(Haydn, Chopin, Prokofiev等)もいずれも素晴らしく(ちなみにこのとき16歳)、2003年のエリザベートコンクールで諌山氏が1次を聴いて優勝候補の筆頭に挙げたというのも頷ける。
- アンスネス(EMI<99>)(11:10)○
技術的に非常にレベルが高く、模範的演奏のひとつ。
ただ、スピードが遅いわけではないのだが、リズムの推進力というかドライヴ感がもうひとつ。そのため何かおとなしい感じがする。
終盤の盛り上がりのff strepitosoのPrestoの部分はすごい加速感で、このような突き抜けた表現を他でたくさん見せてくれればよいのだが、後の部分は何か冷静である。
悪くはないがもうひとつ魅力というか決め手に欠ける感じ。
- K.W.パイク(Virgin>)(11:21)○
ルガンスキーと同様、これもオーソドックスの極致で模範的演奏。技術的にもまずまず。
ただ細かい走句や後半に何度か出てくる重音トリルなどでの粒の揃いが(他盤に比べると)いま一歩かもしれない。
もう少し音のきれいさ(輝き)と、クライマックスの跳躍部分にスピード感と迫力があってもよいかな。
独特の解釈とか他の人にない魅力とか、そういうものはないが、立派な演奏であることは確か。
- カペル(RCA<45>)(9:45)○
音がメチャクチャ悪い(ヒスノイズ+スクラッチノイズ)が、演奏は非常に良い。ヴィルトゥオーソ的演奏だが技巧的な乱れがなく安定している。音さえよければベストの1つに推せるかも。全体的に勢いというか推進力があり、中間部もかなり速いテンポで先を急ぐ。クライマックッスでの追い込みも激しいが、跳躍部分がややおとなしいのが惜しい。ラストはちょっと編曲というかおまけがあってなかなか面白い(ブゾーニ版)。また主部前半でも(管弦楽版のように)右手が16分音符で細かく動くように弾いている(ブゾーニ版もこうなっており、ここだけはこうに弾く人が結構多い。個人的にはこの方が好きである)。
- ヤンドー(Hungaroton<88>)(10:15)○
リストゆかりの楽器での演奏。現代楽器ほどの音の輝きはないが、渋くて悪くない。演奏も派手さはないが堅実。テンポをあまり揺らさないのがよい(素っ気ないようにも聞こえるが)。中間部も速めのテンポでさっぱりしている。最後の方はかなりの迫力で楽器が壊れそうな感じ。現代楽器でも是非聴いてみたいと思わせる(Naxosから出るかな)。
- スルタノフ(Teldec<89>L)(10:34)○
'89クライバーンコンクールライヴ。豪快でノリがよく、スルタノフらしい技巧の冴えが感じられる。同じく収録されているベートーヴェンやショパンのソナタでは(その底の浅さが)あまり感心しないが、こういう脳天気かつ技巧を顕示することに意義があるような(?)曲では合っていそう(かなり偏見が入っているかな)。序奏でいきなり少し音を変えている(2p版に近づけている)のはよい薬味になっている。他にも(彼のオリジナルかわからないが)ところどころで多少手を加えている。跳躍部分で和音連打に噛みしめるようにアクセントを付けるのは、力強いがスピード感の点ではイマイチかも。瑕は少々ある。
- J.スワン(Hunt<75>L)(10:30)○
技巧で鳴らしていた頃の演奏だけに、後年のM&Aへの録音に比べると格段によい。
打鍵に勢いというか張りがあっていきいきしている(多少勢いにのり過ぎという感もしないでもないが)。終盤の跳躍部もスピードがあってほぼ完璧。
ライブらしい熱演だが瑕はあまりない。録音状態が今一つなのが残念。
- オグドン(Melodiya<62>L)○
'62年チャイコフスキーコンクールライヴ。
さすがに優勝時(全盛期?)の演奏だけあって技術的に後年の録音よりずっとしっかりしている。
特筆すべきは終盤のクライマックス部分の畳み込み。特に跳躍部分の前のPestoのところは最速ではないか。
跳躍部の後の右手のスケールのパッセージも速い。
逆に重音トリルのところはちょっと怪しかったりして技術的に完璧とまではいかないのが惜しい。
- セトラク(Solstice<80>)(12:02)○
技巧的に特に秀でたところを見せるわけではないが、丁寧に弾き進めていて誤魔化しがなく、好感の持てる演奏。
音がよく鳴っているのが良い。ただアゴーギグは少し癖があるというか、部分的にテンポを結構変える傾向にある。
終盤の跳躍部は非常にテンポを落とす(最遅の部類)が、却ってリズムがクッキリとよくわかって味があると言えるかも(好意的に見すぎかな)。
- アシュケナージ(Melodiya<59>)(10:54)○-△
Decca録音に比べると音はさらに悪いが、演奏には覇気がみなぎっている。
ただ(音が悪いせいもあって)荒っぽく聴こえるのも確か。鍵盤をぶっ叩いているかのようである。
それでも終盤の跳躍部のスピードと迫力は特筆もの。
後年(Decca時代)のアシュケナージからはあまり想像できない「若気の至り」的演奏である。
- アシュケナージ(Decca<70>)(11:03)○-△
冒頭の音を重ねる部分の打鍵にやや余裕がないのは惜しい(手が大きくないから仕方ないか)が、技術はかなり安定している。後半跳躍部分とその後の部分のスピードは大したもの。音が多少やせ気味というか、高音がシャリシャリした音になっているのが残念(これで損をしている)。というわけで音色の魅力にやや欠けるのが残念。
- J.ブラウニング(EMI<58>)(10:20)○-△
全体的にスピード感、推進力があり、この曲のツボを押さえた演奏と言える。
ただ音質がイマイチなためか、あるいは技術的な問題からか、細部の処理にやや明瞭さを欠くところがあるのが惜しい。
中間部での重音トリルなど、非常に速いがちゃんと弾けているのかよくわからないところもある。
終盤のクライマックス部での跳躍部分は(それまでの急速テンポを考えると)意外なほどゆっくりしたと弾いており、(技巧的見せ場だけに現在はこの跳躍部分はかなりのスピードで弾かれることが多いが、カペルの演奏などを思うと)ひょっとすると昔はそれほど速く弾かないのが普通だったのかもしれない。
- ディヒター(Philips<77>)(10:39)○-△
序奏部分はちょっと表現に納得がいかないところもあるが、主部はまあまあ。彼も前半で右手が音階的に細かく動く稿(ブゾーニ版)を使っているが、この粒の揃い方がグー。全体的に表現にメリハリがある。クライマックスもかなりよいが、跳躍部分がややスローなのと、その後の和音連打が変にアクセントがあってやや不自然なのが玉に瑕。
- ホロヴィッツ(RCA<79>L)(12:16)○-△
最初はテンポも遅く、ここから速くしていくのかと思ったら、主部に入っても遅い。ときどき重低音を激しく鳴らすのがおもしろい(が、品はない)。技巧的にはあまり滑らかさはなく、変なクセがある。中間部はだいぶ編曲が入っている。特に重音トリルのところはセンスがよく(管弦楽版に似た感じになっている)、リストもこうすればよかったのにと思うほど(ブゾーニ版を一部取り入れてようである)。跳躍部分はかなりスローテンポで安全運転している。ラストもブゾーニ版と似た派手なパッセジをつけ加えていてホロヴィッツらしい。演奏を聴くよりは編曲を聴くための盤か。
- J.Michiels(Eufoda<2001>)(10:55)○-△
1884製のBoesendolferを使用。時代楽器のような鄙びた風情がある。
演奏は真面目で学者風。(ライナーノートも本人が書いている。)
誠実ではあるが古い楽器を使っているという以外にあまり特徴は見られない。
- ゲキチ(Victor<89>)(11:26)△-○
全体的にオーソドックスな演奏。
変にアクセントをつけたりと後年の彼の演奏を思い出させるような表現もたまに見られるが、どこか生硬で(音質が硬いせいもあるかも)まだ十分に練られていない感じ。
技術的にも悪くは無いが特に瞠目させられるほどのものではない。
- ペライア(Sony<90>)(11:17)△
冒頭部分はやや鍵盤を叩き気味というか打鍵に余裕がない。主部もスピード感に欠け、手慣れていないというか、洗練されていない印象。和音もあまりきれいに響かない(輝いていない)。後半のクライマックスも堅実過ぎるテンポで面白みに欠ける。ペライアらしいタッチの安定性は感じられるのだが…。ヴィルトゥオーソ的演奏とは最も遠いところにあると言える。
- カツァリス(Teldec<80>)(11:00)△
出だしがかなり遅い。しかしその後急に速くなったりと、テンポをかなり極端に揺らすというか揺れるというか、ちょっとついて行けない感じ。独善的というかかなりクセのある演奏。中間部は普通だがその後のクライマックスでは再びテンポが激しく変わる。しかし跳躍部分はかなりの速さでここは感心する(最速かもしれない)。
- カーメンツ(Ars Musici<2002>)(10:57)△
やたらアクセントを付けたり細かい強弱をつけたりして、ちょっと変わった演奏。全体的に左手を強調する傾向にある。
それを支える技巧が冴え渡っているのならよいのだが、それほどでもないのがつらいところ。一言でいうとゴツゴツしていて技術的にあまり洗練されていない。
(どうでもいいけどジャケットに載っている写真がすっかりおじさん風で、昔の謝肉祭などが入ったCDに写っている美少年風の姿と比べて時の流れを感じさせる。)
- M.ソウチェク(ORF<99>)(11:15)△
丁寧ではあるが、技術的にもうひとつ生彩を欠く。
ぎこちないというほどではが、どこか生硬というか流麗さに乏しい(たとえば中間部の最後の方の同音連打のところなど)。
表現的にもメリハリ、スピード感に欠け、一本調子、あるいは微温的な感じを受ける。
中間部の緩徐部分もリズムが杓子定規でもうひとつ歌い方のセンスに乏しい。
- オグドン(RCA<72>)(9:04)△
確かに速いが、荒っぽいというか弾き飛ばすというか弾き散らかすというか、そんな感じが否めない。技巧的な乱れがそんなにあるわけではないが、丁寧さ、緻密さが足りない。中間部も異様に速くて味も素っ気もない。クライマックスの追い込みは凄くてほとんで崩壊一歩手前という感じがしないでもない。自分に酔ってる感じ。まさに技巧のための技巧。
- リツキー(Denon<95>)(16:08)△
おそらくこれ以上テンポが遅い演奏はないだろう。出だしはほとんど別の曲に聞こえる。遅くても例えばグールドのようにリズムが正確でかつ1音1音が高度にコントロールされていればまだ面白いと思うのだが、そうでもない。中間部もかなり遅い。その後のクライマックスの部分も遅くて、普通は速すぎてよく聞き取れないような音型も聞き取れるのは面白いかもしれない。この演奏について行ける人はかなり許容範囲の広い人だろう。
- カッチェン(Decca<53>)(9:44)△
テンポがやや恣意的に揺れる。どちらかというと勢いにまかせて弾くタイプ。スピード感があるのだが細部があいまいというか、ちゃんと弾けてないところもある。終盤のクライマックスのところは迫力、スピードとも凄いが、コントロールされているとは言い難いのがつらいところ(「指に聞け!」タイプ)。良くも悪くもカッチェンらしさがよく出ている。
- デュシャーブル(EMI<75>)(10:49)△
ペダルを抑制しているのか、あるいは録音のせいか、明晰で歯切れのよい音。だが技巧的にちっとぎこちないところも感じられる。よく言えば手堅い、悪く言えば小さくまとまってしまっている感じ。跳躍部分はややスローなものの、後半はかなり盛り返している。
- ハワード(Hyperion<95>)(10:08)△
技術的にはまあまあだが、細部でちょっと怪しいところがある。(これはハワードの他のリストの曲にも言えることだが)完成度があまり高くない。全体的にはそれほど悪いわけではないが…。
- 野島稔(Reference<87>)(10:54)△
冒頭部分は響きに余裕がなくてやや鍵盤を叩く感じになる。その後は無難にまとめているという感じでこれといった特長は感じられない。終盤の跳躍部分もややスピード感に欠ける。
- Plagge(Tacet<95>)(11:34)△
腰が重いというか、スピード感、躍動感に欠ける。技巧的にもややぎこちないところを見せる。後半のクライマックスのところもスピード的に物足りない。
- ブレンデル(Vox<58>)(11:13)△
テンポがやや揺れるというか、変にルバートをつける。あまり洗練されていないという印象(技術的にも)。中間部でもテンポの揺らし方がもったいぶった感じ。後半部も平凡で見るべきところはあまりない。
- ビアンコーニ(VAI Audio<85>L)(10:58)△
'85クライバーンコンクールライヴ。微温的だがきっちり弾いていてこれという欠点がなく、コンクールなら高得点だったろう。が、CDで繰り返し聴くには魅力に欠ける。後半の跳躍部分の和音連打は(プレトニョフと同様)軽いタッチ。ライヴなので瑕は少しある。ちなみにこのときは第2位。
- シフラ(Philips<62>)(11:25)△
前半はゆっくりしたテンポで、意外と手堅い。1音1音はっきりと出し、噛み締めるようにやたらアクセントを置く。中間の緩徐部途中に現れる重音トリルは粒がきれいに揃っていて気持ちがいい。
終盤になるとスピードを上げて、怒涛の攻めをみせる。ここを強調するために前半はおとなしめだったのだろうか(芸人魂?)、という感じだが、打鍵が何かトダバタした感じがして、単なる指の運動と化している感がある。跳躍部分もそれほど速くない。
- T.スミス(Musicians Showcase<99>)(11:59)△
技巧的なキレ、タッチの洗練さがもうひとつ。解釈の面でも特徴的なところはない。一言で言って平凡な演奏。
- D.Picciche(Phoenix<98>)(12:07)△
全体的にモッサリしていて重い。指回りがもう一つで技巧的に(下手とまでは言わないが)洗練されていない。覇気も感じられない。ごまかしはないので、(好意的に見れば)誠実に弾いているというのかもしれないが、技巧的も音楽的にも見るべきところはあまりない。
- L.ベルマン(Audiofon<92?>)(10:40)△
序奏から主部にかけて非常にゆったりとしたテンポで、楽器をたっぷり鳴らすことはを心がけているようだが、足取りがやや重たい。
技術的にも鮮やかとは言いがたく、細部での明晰さを欠くところもある。
終盤は多少エンジンがかかってきたようだが、往時のベルマンの豪快さを思うと少しさびしい。
- J.スワン(M&A<86>)(10:07)×
打鍵が乱暴で、指の勢いで弾く感じがある。リズムがつんのめるというか、テンポが走ってしまう感じのところも多々ある。細部もかなり怪しい。中間の緩徐部分の重音トリルもちゃんと弾けていない。'75年のライブ録音ではもっと出来がよかったのに、全体的に何か演奏が荒れてしまったようだ。
- Vassiliadis(Discover<97>)(11:52)×
最初から何か変。普通に弾けないのでは?と思ってしまう。変なところでルバート、タメを入れるので違和感がすごくある。音楽的に考えてそうしたのか、そうしないと弾けないのか、後者のような気がする(CDの他の収録曲を聴いても技巧的に見劣りする)。跳躍部分はかなり遅い。弾くのが精一杯という感じ。そこいらの音大生でももう少しうまく弾くような…。
未記入盤
- マツーエフ(BMG<2003>)(11:23)
- Cizmarovic(Arte Nova<2003>)(11:41)
- ハワード(Hyperion<85>)(11:18)
- ヴォンドラーチェク(Triton<2004>)(11:24)
- ラ=サール(naive<2004>)(11:50)
- G.モンテロ(EMI<2004>)(11:39)(ブログ記事)
- タラソフ(Gramzapis<89>L)(10:51)(ブログ記事)
- デュシャーブル(Virgin<96>)(10:14)(ブログ記事)
- J.ナカマツ(HMF<2005>)(11:43)(ブログ記事)
- D.トン(Melba<2003>)(11:03)◎-○(ブログ記事)
- アンダローロ(Naxos<2005>)(12:05)(ブログ記事)
- クレショフ(VAI<2005>)(ブゾーニ版)(12:26)(ブログ記事)
- ハイミ(Centaur<2008>)(11:57)(ブログ記事)
- ハフ(Hyperion<2008>)(11:18)(ブログ記事)
- L.ベルマン(Melodiya<75>)(11:04)(ブログ記事)
- バルトリ(Brilliant<2011>)(ブゾーニ版)(14:26)(ブログ記事)
- ゲルナー(Cascavelle<2007>)(11:37)(ブログ記事)
- ブニアティシヴィリ(Sony<2010>)(11:02)◎-○(ブログ記事)
- アブドゥライモヴ(Decca<2011>)(11:16)(ブログ記事)
- ポワザ(Ars<2013>)(11:57)○
- ガヴリリュク(Piano Classics<2015>)(11:25)
- Huppmann(Gramola<2015>)(10:54)
- Filipec(Goran Filipec Productions<2012>)(11:40)〇-◎
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