リスト パガニーニによる超絶技巧練習曲S.140(1838)
- ペトロフ(Melodiya>)(5:14/5:31/4:37/3:53/3:55/5:58)◎ ジャケット
ツボにはまったときのペトロフの凄さがよくわかる一枚。
強靭なテクニックが冴えわたり、難曲を鮮やかに弾き切っている。
単に正確なだけでなく、細かい表現など音楽的にも充実しており、個人的には不満なところはほとんどない。
(1851年版でもここまでのレベルと完成度で弾いている人はそんなにいない。)
強いて言えば第4番にわずかに明晰性向上の余地があるかもしれないが、むしろ曲の方に無理があるのかも。
その4番のテンポが1851年版より遅くなるのはともかく、他の曲では1851年版とテンポもあまり変わらず、何事も無く(?)弾いている感じで、知らない人が聴いたら、そんなに難曲なの?と思うかもしれない。
録音はAADだが音も良く、この出来栄え(と、この曲集を弾く人の少なさ)を考えると、これを越える盤はしばらく現れないのではないかな。
- 大井和郎(Deutsche Shallplatten<2000>)(5:33/6:06/5:10/4:38/4:13/6:39)○
録音のせいか音がやや硬いというか重い。もう少しタッチに軽快感、洗練が欲しい感じ(なぜかベーゼンドルファーを使っていて、そのせいもあるだろうが)。
演奏は丁寧でごまかしがなく、誠実と言えるが、難所ではそれなりに苦しさを見せる。
細かく見ていけば、1番は終盤の盛り上がり部分でもうひとつ加速しきらず、旋律部分のタッチもややぶっきらぼうで、もう少し歌うような細かいニュアンスが欲しいところ。
2番も主題の32分音符の細かい動きが(丁寧だが)やや安全運転になっている感が拭えない。
3番もクライマックスのsempre fffの部分で難しいことが伝わってくる。
4番もテンポが遅いのはともかくleggieramente等の指定には遠い気がする。
6番もやはり第4、9変奏などもう少しleggieroさが欲しいところ。
等々、いろいろネガティブなことはあるが、全体的には健闘していると言えるだろう(他にあまり比較盤がないのではっきり言えないが)。
たださすがにペトロフ盤の前では相手が悪いという感じ。
(どうでもいいけどライナーでこのCD企画の自称「影の仕掛け人」が、この盤を「真の意味での初版の世界初録音」などと言っているのは、なんだかなぁ…と思ってしまう。)
- ハワード(Hyperion<97>)(5:31/5:33/4:37/4:22/4:29/6:31)△
1851年版でさえおぼつかないのに1838年版を弾くこと自体に無理がある。
とまでは言わないが、細部がいまひとつ怪しいし、技術的に隔靴掻痒の感があってフラストレーションが溜まる。
それでも1、2番はそれほど悪くないのだが、後半(4〜6番)は苦しい。
特に4番は痛ましい。
なおこの盤には4番の第1稿や1、5番の異稿も収録しており(当然1851年盤も)、その意味では大井和郎盤が謳っている「完全盤」という言葉はこちらの盤によりふさわしい。
未記入盤
- Filipec(Naxos<2015>)(4:41/5:33/4:34/3:54/3:37/6:02)◎
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