プロコフィエフ ピアノ協奏曲第2番ト短調Op.16
- レーゼル/Bongartz/ライプツィヒ放送so.(Corona Classic<70>)(11:18/2:30/7:04/10:37)◎-○ ジャケット
抒情性や幻想性こそ少なめだが、オン気味な録音のせいか、ピアノパートがクッキリ聞こえ、プロコフィエフらしい鋭角的なピアノ書法が一番味わえる。
特に第1楽章の長大なカデンツァの後半に出てくるfffでのアルペジオのところはまさに1音1音がきらめき、この演奏の白眉と言える。
これを聴くとこの部分の他の演奏は(軽すぎるようで)何か物足りない。
他の楽章も同様で、例によって几帳面というか楷書的なタッチであるが、音が「立って」いる。
ただし第2楽章だけはピアノがややオケにかき消され気味(というかオケが出すぎ?)で、ちょっと地味である。
というわけで第2楽章だけが少し残念。
- デミジェンコ/ラザレフ/ロンドンpo.(Hyperion<95>)(12:26/2:38/8:33/11:41)○-◎
強弱や音色、アーティキュレーションなど、微妙な表情のつけ方がいつもながら上手いというかソツがない。技巧も万全に近い。
第1楽章のカデンツァなどもかなりよいのだが、例のfffでのアルペジオの部分は(他の演奏者でもそうなのだが、レーゼル盤を聴き慣れていると)やはり物足りなさを感じる。
第2楽章も迫力はそれほどでもないが、タッチが十分にコントロールされ、さすがにこういうテクニックはピカイチである。
第3楽章はメリハリがあって表現意欲に溢れているが、(Allegro moderatoというには)さすがにテンポがちょっと遅すぎるか。ただ、この楽章の不気味というかグロテスク、アイロニカルな感じ(ちなみにこの楽章は、ヴァイオリン協奏曲第1番の第1楽章などと同じく、プロコフィエフの最良の部分のひとつが出ていると思う)を十二分に出すためには悪くない。
終楽章は両端のAllegro tempestosoの部分は相当のスピードで技巧がキレまくり。
ただ間のカデンツァなどはちょっとおとなしめか。
- トラーゼ/ゲルギエフ/キーロフ歌劇場so.(Philips<95>)(13:19/2:17/7:31/12:57)○-◎
協奏曲第3番でもそうだったが、彼の演奏は決してルーティーンに流れず随所に工夫が溢れている。
第1楽章は最初のAndanntino部分やカデンツァなどたっぷりと静かに、抒情的に歌う。
それでいて特定の音を強調したり、小細工というか細かい表情づけが一杯。これは第3楽章で特に顕著で、すべての音に深い検討の跡がある感じ。
第2楽章もほとんど最速のテンポにもかからわず、ただ弾くだけでなく、微妙な表情づけがあり、そのあたりのコントロールはデミジェンコのさらに上をいくかも。
終楽章も1音1音に表情があり、よく考えている(こういうのを「楽譜の読みが深い」というのか)。中間部のMeno mossoの部分もセンスよく歌っており、カデンツァも出だしなどは記録的にゆっくりと弾いているが、あまり弛緩した感じはない。
もちろん、あまりこねくり回し過ぎずに、(レーゼルなどのように)もっとストレートに行ってもよいと思うが、こういうやりかたもアリだろう。
実際、この演奏を最初に聴いたときはちょっともったいぶり過ぎと思ったが、改めて聴いてみるとなかなか味わいがある。
ちなみにライナーノートを読むと、トラーゼはこの曲に(5曲の中で)1番思い入れがあるようだが、それだけのことはある演奏である。
- グティエレス/ヤルヴィ/ロイヤルコンセルトヘボウo.(Chandos<90>)(10:56/2:26/6:38/10:53)○-◎
ノリがよいというかダイナミック。
強弱、緩急が自在で、あまり作為的、神経質なところがない。
特にカデンツァや終楽章の中間部のような歌謡的な部分での歌い方、盛り上げ方が堂に入っている。
こういうのは解釈云々より演奏者のセンスの問題だろう。
打鍵に勢いがあって自然な息づかいが感じられる。
ただし勢いを大切にした分、多少細部の詰めに多少甘さを残すかもしれない。
全体的にモダニズムよりロマンチック指向が強いと言えるかも。
とっつきやすさから、最初に聴く盤としては(もちろんあとから聴く分にも)なかなかお薦め。
- フェルツマン/ティルソン=トーマス/ロンドンso.(CBS<88>)(11:45/2:42/7:01/11:16)○
第2楽章が聴きもの。
テンポこそ遅めで後ろに重心が残った弾き方だが、タッチの安定性、明晰さ、粒の揃い方などは特筆に値する。
表情に乏しく、機械的で非音楽的だと感じる人がいるかもしれないが、ひょっとしたらこの方が作曲者の意図と合っているのかも(私自身はこういう弾き方も結構好きである)。
他の楽章もタッチの安定性は抜群だが、音色や陰影などの表情の変化は少ない。
終楽章も丁寧だが、両端のAllegro tempestoso部分は丁寧過ぎてややスピード感不足。
でもカデンツァ後の細かい音型(3連符の16分音符のところなど)は非常に冴えている。
こういう無窮動的な部分は彼の得意なところかもしれない。
- K.W.パイク/ヴィト/ポーランド国立放送so.(Naxos<91>)(12:43/2:25/6:38/9:48)○-△
オーソドックスで技巧的にもまずまず。
ただ第3楽章や終楽章で(意図的なんだろうが)テンポ走ってるように感じられるところがある。
第2楽章は音が明晰でなかなかよい。
- ボレット/T.ジョンソン/シンシナティso.(Dante<53>)(10:50/2:25/5:56/11:07)○-△
第1楽章は勢いがあり、自然かつスケールの大きな歌い方が彼らしい。
グティエレスのようなロマンチック路線と言える(もちろんこちらの方が先だけど)。
第3楽章もかなり速めのテンポで勢い重視なんだろうけど、(この楽章が好きな私としては)もうちょっと味付けが欲しいところ。
終楽章はカデンツァ手前のPiu mosso(Allegro)がややテンポが遅めで少し迫力不足。
だがそのカデンツァ後半からの3連符アルペジオなどなかなか軽快で冴えている。
音の状態は輪郭がややぼやけた感じでもうひとつ。
- 高雄有希/Tchivzhel/シドニーso.(ABC<96>L)(11:38/2:16/6:32/11:39)○-△
'96年シドニー国際ピアノコンクールライヴ。
全体的にスケールは大きくないが、うまくまとまっている。
リズム感の良さが感じられるし、音楽的にも素直で端正。品がよいと言おうか。
そういうわけで特にこれと言った欠点はないのだが(もちろん多少傷はある)、他の盤にない魅力というか、個性や特長に乏しいのも確か(コンクールだからあまり個性を出しすぎてもいけないのかもしれないが)。
ちなみに彼はこのとき第2位。
- ベロフ/マズア/ライプツィヒゲヴァントハウスo.(EMI<74>)(10:15/2:33/5:46/10:43)△-○
迫力はあるのだが、タッチがやや雑というか緻密さが足りないように感じられる。
大きめに録られているピアノの音が多少大味というか安手の金物っぽい音がして、音的な魅力にやや欠けるせいもあるのかもしれない。
解釈的にはオーソドックスだがテンポは全体的に速め。
第3楽章は元気はあるのだが、やはり素っ気なくて少し物足りない(個人的趣味ではもっとオドロオドロらしさを出して欲しいところ)。
- アシュケナージ/プレヴィン/ロンドンso.(Decca<75>)(12:04/2:36/6:23/11:24)△
第1楽章のAllegrettoの部分がどうもモッサリしていてノリが悪い。表情付けもやや不自然に感じるところがある。
カデンツァも、特に前半のAndantino主題のところは歌おうとしているのはわかるのだが何か停滞している様子で、もう少し畳み掛ける感じが欲しい(アゴーゴクがうまくない?)。
第3楽章はちょっと健康的過ぎる感じ。
12,13連符で上昇する部分で最高音にアクセントを付けるのも少し気になる。
気のせいかあまり深く考えずに弾いているように聞こえる。
- アルダシェフ/スヴァロフスキー/プラハso.(Supraphon<98>)(12:16/2:28/6:37/11:02)△
特に悪いというわけではないが、技術的にも音楽(解釈)的にも面白みに欠ける。
特長というか、突き抜けたところがない。微温的。
第2楽章でのタッチのキレももうひとつ。
終楽章Allegroの技術的な見せ場のようなところでも打鍵に気合いが入っていない感じ。
未記入盤
- クライネフ/キタエンコ/フランクフルト放送so.(Teldec<92>)(11:31/2:34/6:42/10:57)
- エッカードシュタイン/G.Varga/ベルギー国立o.(Cypres<2003>L)(11:42/2:28/6:45/11:27)2003年エリザベートコンクールライヴ
- エル=バシャ/大野和士/Monnaie so.(Fuga Libera<2004>L)(11:35/2:36/6:24/10:59)
- マルシェフ/Willen/South Jutland so.(danacord<2001>)(14:01/2:33/7:36/13:11)(ブログ記事)
- リ・ユンディ/小澤征爾/ベルリンp.(DG<2007>L)(11:10/2:16/5:39/10:40)(ブログ記事)
- F.ケンプ/リットン/ベルゲンpo.(BIS<2008>)(11:56/2:26/5:54/11:12)(ブログ記事)
- ヴィニツカヤ/ヴァルガ/ベルリン・ドイツso.(naive<2010>)(12:07/2:26/7:50/10:54)(ブログ記事)
- コジューキン/オルソップ/ベルギー国立o.(QEIMC<2010>L)(ブログ記事)2010年エリザベートコンクールライヴ
- ユジャ・ワン/ドゥダメル/ベネズエラ・シモン・ボリバルso.(DG<2013>L)(11:02/2:22/6:35/11:00)
[CD聴き比べ][HOME]