スクリャービン エチュード集(Op.2-1, Op.8, Op.42, Op.49-1, Op.56-4, Op.65)
- Levinas(Ades<93>)(2:59// 1:30/1:48/1:43/1:06/1:41/2:56/1:35/4:53/4:58/1:53/5:03/2:37// 1:41/0:45/0:49/3:46/3:13/2:05/0:54/2:13// 0:24// 0:29// 3:37/3:00/1:50)○ ジャケット
全体的に音は軽めだがスピード感がある。力みがないというか、肩の力が抜けている感じ。Op.8-4は(一般に作曲者指定のメトロノーム速度はかなり速めだが)それより速くて爽快。Op.8-5も非常に勢い・元気がある(この曲は優美に弾かれることが多いが、Briosoという指定にはこの演奏が一番忠実な気がする)。ただ後半で、主題が3連符になったときに語尾がルーズになるのが残念。逆にOp.8-6はやたらテンポが遅く(メトローム指定の倍近い遅さ)、彼の解釈なのだろうが(個人的には)ちょっと納得いかない。Op.8-8,11,Op.42-4などの緩徐系の曲やOp.8-9の中間部などではかなりテンポを落としてしっとりと歌っており、淡々としている中にもセンスを感じる。Op.8-12なども盛り上げ方がうまい。惜しいのはOp.65の3曲がやや弱い(力強さとスピード感に欠ける。畳み掛ける迫力に乏しい)こと。また(レーンもそうだが)Op.8-10の後半の左手についたsfをあまり強調しないのはちょっと物足りない。Op.8-3でも左手が2連符になったときのアクセントが弱い。
- レーン(Hyperion<92>)(2:51// 1:28/1:36/1:47/2:04/1:57/1:43/1:54/4:12/4:31/1:48/4:12/2:14// 1:47/0:55/0:52/2:43/2:53/1:28/0:51/1:55// 0:32// 0:23// 3:24/1:51/1:36)○
技術的に洗練されていて滑らか、手慣れた感じがする。技術的には(少なくとも全曲盤では)一番上かもしれない。特にOp.65の3曲が(他の盤の出来が総じてイマイチなので)良い。サラサラと流れ過ぎてひっかかりがないのが不満と言えば不満か。テンポも速めで、全体的として楽譜に示されたメトロノーム速度に一番近い感じ。ただOp.8-4のテンポが遅めなのは(多分彼の解釈なんだろうが)ちょっと不満。Op.8-6はまさに優美(grazia)で滑らか、この曲の演奏ではベストだろう(これでメトロノーム指定と同じテンポなら言うことなし)。ただ緩徐系の曲ではLevinasほどしっくりこない。
- グリーン(Supraphon<95>)(3:20// 1:31/1:57/2:03/1:33/2:17/1:53/1:55/3:19/4:29/1:53/4:15/2:36// 2:01/0:52/1:00/2:39/3:05/1:59/0:52/2:14// 0:37// 0:29// 4:40/1:50/1:53)○-△
異様なキレを見せるとか、特異な解釈とかはないが、堅実でオーソドックス。どの曲もまずまずなのだが、いま一つ決め手を欠くというのが率直な印象。音楽性は素直で自然。濃密さは少なくすっきりしている。急速系の曲ではもう少しスピード感があってもよい。Op.8-5はBriosoとは正反対の優美な表現。Op.65-1は平行9度のパッセージが(苦しいのか)ちょっと硬い。Op.65-3も主題の平行5度の動きにもうすこしキレが欲しいところ。
- ホロヴィッツ(CBS<62,72>)(Op.2-1, Op.8-2,8,10,11,12, Op.42-3,4,5のみ)(3:04// 1:29/3:40/1:46/3:57/2:05// 0:49/2:39/3:06)○-△
(録音のせいもあるだろうが)例によって乾いた音で、各音が透き通って見えるような、スケルトンのような演奏。技巧はもちろん達者だが、異常なキレを見せるほどではない。それよりは各声部の弾き分けなどの小技が効いている。Op.8-10では第2主題部で最初の拍で左手に(譜面に無い)アクセントを付けるのがホロヴィッツらしい(後半の左手低音のsfでは当然、ここぞとばかりに強打する)。Op.8-12は意外におとなしい。Op.42-5はスケルトン的な演奏の代表で、細かい音の動きがよくわかるのが面白い。
- リヒテル(Melodiya<52>L)(Op.2-1, Op.8-5,11, Op.42-2,3,4,5,6,8, Op.65のみ)(2:51// 2:17/4:11//0:55/0:37/2:33/2:30/1:52/1:50// 2:45/2:05/1:34)○-△
全体的にテンポが速い。Op.42-3(モスキート)は記録的な速さで弾かれているが、せかせかして落ち着きがない感じもある。Op.42-5も相当速いテンポ(持っている中では最速)で後半の追い込みは物凄いが、録音のせいか全体がボヤッとしてあまりはっきりしないのが惜しい。Op65-1も同様に連続9度のスピードがたいしたものだが、やはり録音がイマイチなのが残念。その中ではOp.65-3は音が悪いながらもかなり迫力・スピードで、音が良かったらさぞかしと思わせる。Op.8-5はかなり自由なアゴーギクでゴムのようにテンポが伸び縮みする。
- Afriat(Forlane<90>)(Op.8, Op.42のみ)(1:20/1:39/1:50/1:30/1:50/1:44/1:47/3:41/5:27/1:55/4:27/2:27// 1:42/0:52/0:58/2:26/2:52/1:43/0:40/2:20)△
全体的に(硬質な録音のせいもあるのか)タッチが生硬というか、滑らかさに欠ける(凸凹した感じがする)。プロならばこういうところはルバートやペダル等の手練手管でごまかすのだろうが、そういうところがなく、そういう意味では素人っぽい感じがする。テンポは概ね中庸だが、Op.8-9だけは遅さが目立つ。演奏もぎこちないので、解釈でそうなったというより技術的な制約からだろう。音楽的にはすっきりしていて方向性は悪くないと思うが、技術的な面が明らかに弱い。
- 岡城千歳(Pro Piano<96>)(3:04// 1:45/1:56/2:20/1:53/2:26/1:53/2:01/3:56/5:22/2:06/4:17/2:47// 2:05/0:56/0:59/3:17/3:34/1:53/1:01/2:24// 0:33// 0:29// 4:38/2:47/2:07)△
表情付けがややもったいぶっていて、極端に言えば1小節ずつ表情に変化をつけている感じ。悪く言えばこねくりかえすといった印象。テンポも全体的にゆったりしていて、かつリズムにタメというか粘りが多くてスッと流れない。3秒としてインテンポでは弾かないと言ったら言い過ぎか。急緩急の3部形式の曲では中間部で異様にテンポを落とすことも多い。テクニシャンタイプとは思えないので、「キレよりコク」路線を目指しているのだろうが、こう遅いと(かつテンポを揺らす)とさすがにかったるい。その中ではOp.8-6などがよい方。
- パレイ(Naxos<94>)(2:58// 1:45/1:45/2:22/1:50/2:44/1:59/2:10/3:36/5:15/2:03/4:25/2:37// 2:29/1:03/0:59/2:18/3:36/2:17/1:17/2:19// 0:38// 0:34// 3:30/1:47/1:56)△
一言で言って微温的。良く言えば優美だが、のんびりしていて技巧的なキレが全く感じられない。速く弾く技術はあるが敢えて(解釈から)遅いテンポで弾く、というコンセプトならまだしも、そうでもないみたい。全部ではなくても、何か1つでも光る曲があればいいのだが…。
未記入盤
- R.Saitkoulov(EMI<99>)(Op.42のみ)(2:03/0:55/0:59/3:11/3:16/2:13/0:59/2:33)
- マガロフ(aura<91>L)(Op.8のみ)(1:41/1:34/2:07/1:20/2:01/1:45/1:46/2:56/4:27/1:55/3:17/2:19)
- マガロフ(Auvidis Valois<92>)(Op.8, Op.42, Op.65のみ)(2:44// 1:44/1:32/2:03/1:25/2:09/1:50/1:52/3:13/4:49/1:54/3:19/2:27// 2:12/0:45/0:59/1:58/3:35/2:06/0:50/2:12// 3:11/1:47/2:20)
- セトラク(Solstice<92>)(3:06// 1:45/1:54/2:03/1:27/2:34/2:09/1:49/3:41/5:11/2:05/4:00/2:26// 1:54/1:07/0:59/2:29/3:05/1:45/0:57/2:10// 0:32// 0:26// 2:59/2:21/1:59)
- ラン・ラン(Telrac<2001>)(Op.2-1, Op.8-2,3,8,10,11,12, Op.42-3,4, Op.65-3のみ)(2:46// 1:42/1:50/3:48/1:52/4:06/2:26// 0:50/2:43// 1:54)
- L.ジャルドン(AR RE-SE<2005>)(1:56// 1:33/1:24/1:57/1:18/2:09/1:32/1:25/2:14/3:37/1:58/2:56/2:17// 2:10/0:48/0:58/1:32/3:00/1:43/0:49/1:53// 0:34// 0:29// 3:10/1:29/1:56)(ブログ記事)
- オールソン(BRIDGE<2004>)(3:17//1:29/1:41/1:59/2:02/2:26/1:45/2:02/3:46/4:26/2:01/4:03/2:13//1:43/0:59/0:51/3:07/2:48/2:07/0:50/1:58//0:52//0:32//3:33/2:02/1:52)(ブログ記事)
- コロベイニコフ(MIRARE<2014>)◎-〇(3:15//1:38/1:33/1:57/1:33/2:56/2:00/1:54/3:44/4:45/1:59/4:49/2:05//1:58/1:01/1:04/2:46/3:02/1:45/1:03/2:44/0:32/0:28//3:36/2:06/1:46/)
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