プロコフィエフ 4つの小品Op.4より第4番「悪魔的暗示」
- エル=バシャ(Forlane<81>)(2:20)◎ ジャケット→
音が明晰でキレがあり、リズムもよい。
非の打ちどころがないと言ったら言い過ぎかもしれないが、よい意味で模範的演奏。
特にモーター的リズムを活かすために極力インテンポをキープしているのがよい。(よく、和音強打やグリッサンドの後で一瞬間を置く人が多いが、それがない。)
ダイナミズムにも溢れている。録音も優秀。
強いて注文をつければグリッサンドでのさらなる迫力か(インテンポと反するかもしれないが)。
- チュウ(HMF<94>)(2:31)◎-○
序奏はかなりゆっくりしているが主部は一転してかなりのスピードで、その対比がうまい。
技巧的にも十分だが表現にも一工夫というかメリハリがある。
グリッサンドは多少もったいぶった感じがするが、その後の右手和音の中の半音階上行形がよく浮き出ているのが印象的。
ただし全体的にやや元気過ぎるというか、迫力は十分なのだが曲の持つ「悪魔的」な不気味さ・病的なものが出たらもっとよかったかも。
それでも割と演奏者の個性が出にくいこの曲では個性的演奏と言える。
- マルシェフ(danacord<94>)(2:36)◎-○
エル=バシャと同タイプの模範的演奏。
技術・解釈的にケチをつけるところはほとんどない。
エル=バシャと比べると序奏などテンポは幾分落ち着いていてアクセント等のメリハリは少なめだが、技術的にはさらに洗練されて(サラッとして)いる感じがする。
エル=バシャ盤を聴き慣れていると、それを超えるような何か個性的なところ(積極的にこの盤を聴くポイント)も欲しい気もする(贅沢かな?)。
- カシオーリ(DG<96>)(2:36)○-◎
序奏のテンポが速めで作曲者自身の演奏と近い。
強弱・緩急等の表現が意欲的で、テンポを微妙に変化させるところは(本当はインテンポが好きなのだが)なかなか説得力がある。
ただ技術的にときどき不自然さというかタッチに神経が行き届いていないように感じられるところがあるのが惜しい。
また左手オクターブでの主題が少し無表情なのが(彼の解釈かもしれないが)少し物足りない。
- I.ヤンセン(Globe<89>L)(2:41)○
自然で勢いのある演奏。
スピード感はそれほどでもないがこの曲のモーター的リズムが結構よく感じられる。音にも迫力があり曲の雰囲気がよく出ている。
彼はそれほどテクニシャンタイプではないと思うが、この曲に関してはいい味を出している。
ライヴ録音としてはかなり完成度が高い。
- B.ベルマン(Chandos<91>)(2:49)○
テンポが落ち着いている。
和音連打などのタッチがどこか均質的というか機械的なのが面白い。朴訥な感じ。
技術的にあまり洗練されているという風ではないがこういう演奏も悪くないかも。
- モイセイヴィッチ(Testament<50>)(2:46)○
残響が多めの録音で音質的にはかなり聴きづらいが、演奏は(同じ頃のチェルカスキーと比べると)丁寧でしっかりしている(多少音抜けとかもあるけど)。
表現も自然で雰囲気がよく出ている。
印象的なのは最後は右手の音を(段々と高くしていくように)変えているところ。この方が洒落ている(作曲者もこうすればよかったかも?)。
グリッサンドの部分も少し弾き方が変わっている。
- ガヴリーロフ(EMI<79>)(2:45)○-△
いかにもガヴリーロフらしく迫力があってスケールがデカい(生で聴いたらさぞかしと思わせる)。
ただ録音がいまひとつなのか、音がやや荒っぽく(叩きつける感じ)、精緻さというかデリカシーには欠ける。
グリッサンドはここぞとばかりかなりタメを作ったりして豪快だが、その後の部分で内声を浮き立たせることもあまりしない。
全体的にやや乱暴というか勢いで勝負しているという感じで個人的にはいまひとつ。
- プロコフィエフ(Pearl<35>)(2:21)○-△
序奏が素っ気ないほどに速く、作曲者はこういう解釈だったのかと参考になる。(往々にして作曲者自身の解釈は現在に比べると素っ気ない。)
逆に主部は開始テンポは遅く、やっぱり専門ピアニストほどのテクニックはないのかと一瞬思うが、そこから加速して行き実は思ったより上手いことがわかる(それほど遜色ない)。
解釈はそれ以外は普通で現代の演奏とあまり変わらない。
音は非常に貧しく、小さな節穴から風景を覗き見るようなもどかしさがある。
- G.タッキーノ(Pierre Verany<90>)(2:54)○-△
序奏では休符でかなり間を空け、ややもったいぶっている感じ。
主部は堅実だが技巧に少し見劣りがしないでもない。
その分小細工などの表現上の工夫をしているというか、細部までよく神経を行き届かせている。
グリッサンドはよく言えばかなり丁寧(悪く言えばスピード不足)。
- チェルカスキー(Pearl<46>)(2:31)△
序奏はゆったりしているが、主部はかなり速いテンポ。
だがそのテンポをしっかりキープしているという感じではなく、グリッサンドや強打の前でタメが結構入るし、テンポも揺れがち。
どこか弾き飛ばしているような印象を受ける。
音質も貧しく細部がよく聴き取れない。
未記入盤
- アンジャパリジェ(Naxos<95>)(2:37)
- ジャッド(Chandos<79>L)(2:30)
- アブドゥライモヴ(Decca<2011>)(2:36)(ブログ記事)
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