38.ヴィクトリア・コルチンスカヤ(ロシア、25歳、女性)
Rachmaninov: Op.39-6 Liszt: パガニーニ練習曲第2番 Chopin: Op.25-12 一柳慧: ピアノのためのピアノ・ポエム Brahms: ソナタ第3番Rachmaninovは割と落ち着いたテンポだが中間部は凝った表現。強弱のコントラストが強い。悪くない。 Lisztもまずまず。低音部が充実、というかちょっと出しすぎかも。 Chopinもやはり低音部に重心ががあって高音部のきらめくようなパッセージがあまり聴こえない。 表情もやや一本調子。1次のコブリンの音楽的な演奏と比べるとちょっと落ちる。 Brahmsは、音量はあるがフォルテで音がヒステリックに感じる。 デカい音を出せばよいというものではないという感じ。 個人的にはもう少し音量を落としても響きをコントロールした方がよいと思えるが…彼女はスケール感や迫力を重視しているのかも。 そもそもこの曲はあまりピンと来ないので、長く感じた。(でも次の人もこの曲を弾くんだよね…。)
49.イエンジェイ・リシエツキ(ポーランド、22歳、男性)
Brahms: ソナタ第3番 一柳慧: ピアノのためのピアノ・ポエム Rachmaninov: Op.33-5 Chopin: Op.25-10 Scriabin: Op.42-5いきなりBrahmsということで3番ソナタの連続攻撃となった(;_;)。 少しこもったというかヌケの悪い音。 あまり魅力的な音ではないが、聴き疲れしないだけでもいいかも。技術(メカ)的には前のコルチンスカヤより少し弱い感じ。 第2楽章もそれほど深く歌わずにすっきりしているが、前の人のボリュームのあるステーキのような演奏の後だと、こっちの方がホッとする。 終楽章も打鍵が無造作に感じられるところはあったが、こぢんまりしている分、疲れなかった。 Rachmaninovもこぢんまりとしており、あまりスケール感はない(技術的にも)。 Chopinは開始がノンレガートでインテンポで入るのが面白い。中間部はちょっとミスしたが思ったよりよかった。 最後のScriabinもあまりゴチャゴチャせず、すっきりして悪くない。
14.ロマン・デシャルム(フランス、23歳、男性)
一柳慧: ピアノのためのピアノ・ポエム Ravel: スカルボ Schubert: ソナタD.784 Chopin: Op.10-4 Debussy: 対比的な響きのための Liszt: 超絶第8番ここからは1次で聴いたことのある人である。
60.岡本麻子(日本、26歳、女性)
一柳慧: ピアノのためのピアノ・ポエム Liszt: 鬼火 Debussy: 4度のための Chopin: Op.10-8 Ravel: オンディーヌ、スカルボ Chopin: アンダンテ・スピアナートと華麗な大ポロネーズ鬼火はまずまず。ちょっとミスがあるが昨日の田村君より手馴れた感じである。 Debussyは最初の4度の高速パッセージのキレがもうひとつ。明確に聴こえない。 中間部の見せ場の4度のパッセージも音が弱くてよく聴こえない。このDebussyはイマイチ。 Chopinの10-8はまことに滑らか。リズムも生き生きしている。これは上手かった。 Ravelはスカルボがもうひとつ。 デシャルムよりミスが多いし、細部のclarityに欠ける。(モゴモゴした感じ。)ちょっと変調気味だったかも。 強弱のメリハリも小さめ。(大きければよいというものでもないが。) 最後のChopinは右手の細かい動きが非常に滑らか。 リズムもよい。10-8といい、1次のスケルツォといい、彼女はChopinが合っているのかも。 あえて注文をつければ左手にもう少し存在感があってもよいか。
58.オイゲニー・ムルスキー(ドイツ、28歳、男性)
一柳慧: ピアノのためのピアノ・ポエム Chopin: バラード全曲 Chopin: Op.25-11 Scriabin: Op.8-12 Liszt: ラ・カンパネラChopinのバラードはどの曲も手馴れた感じでよく弾けているが、なぜかあまり胸に来るものがない。 1番や4番など、あまりフォルテ和音がきれいでない(音が割れる感じ)なのも一因だと思うが、それだけではないだろう。 彼とは波長が合わないのかもしれない。 正直、長く感じた。(今回は1番はクリマー、4番はアナスコの好演が印象に残っているせいもあるかも。) 25-11はテンポが速く、それなりに上手いことは認めるが、音があまり魅力的でない。目立つミスもあった。 Scriabinは出だしは大人しめだったが最後はかなりの音量。ちょっと騒々しく聴こえなくもない。 最後のLisztはなかなかよかった。
70.アレクサンダー・セレデンコ(カナダ、16歳、男性)
一柳慧: ピアノのためのピアノ・ポエム Chopin: Op.10-1 Liszt: ラ・カンパネラ Rachmaninov: Op.39-5 Ravel: 夜のガスパール Liszt: ハンガリー狂詩曲第2番爆演系の16歳、セレデンコである。 まず一柳の委嘱作品から個性的。轟音をとどろかせるなど笑いを誘うところも。 Chopinの10-1も爆演系の名に恥じぬ。ほとんどデタラメに近いと言ってもよいかも。(シフラほどではないが。) この演奏を「矯正」しなかった先生もえらい!(さすがグールドを生んだトロント音楽院。) Lisztはテンポは速いがどちらかというと大人しい。と思ったら後半は怒涛のフォルテシモ攻撃。やはり爆演だった。 Rachmaniovはすべてフォルテから上で勝負している感じ。 はっきり言って騒々しいんだけど、確信犯だからどうこう言ってもしかたがない。 Ravelはオンディーヌが最初から繊細さ、デリカシーとは無縁。違う曲を聴いているみたいだった。 このあたりから真剣に聴くのはやめて、とにかく演奏を楽しむことにした。 スカルボもところどころ崩壊気味に爆走していた。 ただ最後のLisztだけは、ある程度自由にやってよい曲だけに彼に合っている。意外性のあるアゴーギグなど、自由奔放である。でもハンガリー狂詩曲は本来はこうでなくちゃいけない。(真面目に)素晴らしかった。 この演奏だけはCDを欲しいと思った。最後に彼のad libを入れなかったのが残念(密かに期待していたのだが)。
69.関本昌平(日本、18歳、男性)
Rachmaninov: Op.39-9 一柳慧: ピアノのためのピアノ・ポエム Scriabin: Op.8-12 Chopin: バラード第1番 Chopin: Op.25-5,6,7 Liszt: メフィストワルツ第1番Rachmaniovは勢いと音量はあるが音楽の練りが足りない感じ(特に緩徐部分)。やはり力で押す傾向にある。 Scriabinも、どうも彼の乱暴な(と言ったら言い過ぎかもしれないが)音が好きになれない。 だが次のバラード第1番ではそれを感じなかった。 音が磨かれている感じだ。力任せに叩かないときはいい音を出しているのかも。 このバラードはよかった(目立つところでミスもあったし、コードの追い込みもおとなしめだったが)。 少なくともムルスキーの演奏より好きだった。 次の25-5はもうひとつピンボケみたいだったかな(主部が)。 25-6は完璧とはいえないがまずまず。だた強くアピールするところまではいかなかったか。 Lisztは技術的にいまひとつ。また響きがコントロールされていない感じである。
28.ヴァレンティナ・イゴシナ(ロシア、25歳、女性)
Schumann: ウィーンの謝肉祭の道化芝居 Chopin: Op.25-10 Liszt: 超絶第10番 Rachmaninov: Op.39-6 一柳慧: ピアノのためのピアノ・ポエム Liszt: スペイン狂詩曲Schumannはくぐもったというか、少しこもったような音(よく言えば暖色系)。 実はそれほどよく知っている曲ではないのでなんともいえないが、正直、音に魅力を感じない。 もっと透明感のある音が好きなのだが。 Chopinの25-10は悪くない。テンポこそ速くないがオクターヴが安定している。中間部の歌い方もよい。 超絶10番はよく歌う演奏。フッとテンポをゆるめたり、解釈にも個性が出ている。 Rachmaninovは鈴木君やサルニコフと比べると大人しい感じ。ミスもあってもうひとつか。 最後のスペイン狂詩曲は途中の3度が上手い。 ただ残念ならがクライマックスでのオクターブ交互連打があまりキマっていなかった。 その後の部分を聴いても、技巧的に水準以上であることは確かなのだが…。
36.タチアナ・コレッソヴァ(ロシア、18歳、女性)
Brahms: パガニーニ変奏曲第1、2集 Chopin: 幻想曲 Debussy: 半音階のための 一柳慧: ピアノのためのピアノ・ポエム Scriabin: Op.8-9 Chopin: Op.25-11今回も客席を見ないようにおじぎをする。 Brahmsはあまりパッとしない、というかかなりイマイチ。 難曲を選んだが、かえって技術的限界が見えてしまった。 表現も生硬。 このコンクールでのこの曲の水準よりはだいぶ下という感じである。 Chopinの幻想曲も音が重く、美しくない。歌のセンスも感じられない。リズムのキレも悪い。(今日は体調が悪いのか?) Debussyはフレージングにしまりがない。 Scriabinも見通しの悪い演奏。乱暴にしか聴こえない。 木枯らしもあまり印象に残らない。
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2次の2日目を聴き終えて、個人的に特に好感を持ったのは
14.ロマン・デシャルムである。 あとは数人を除いて横一線、というか是非3次に進んで欲しいと思う人は見あたらなかった。(正直、低調だった。) 今日はよくも悪くもセレデンコのステージがハイライトだったのかもしれない。