69.関本昌平(日本)
Beethoven: ソナタ第10番 Chopin: ソナタ第2番 Rachmaninov: ソナタ第2番(オリジナル版)Beethovenは思ったより悪くない。 指回りが非常に安定している。こういう優美な曲だと力で押す悪い面が現れないのかも。 (ただ個人的にはこの曲は1次のグルニュクの羽根のようなタッチの演奏が印象に残る。) あと第2楽章はやや単調だったか。 次のChopinのソナタもツボを押さえた演奏で悪くない。 強弱、緩急など解釈についてはあまりケチをつけるところはない。 田村君のような強い個性はないが、よくまとまっていた。 問題にするとすればやはり音か。(音を磨くというか、音自体に魅力を出す。) 最後のRachmanionvも音(の美しさ)の点で少し不満はあるが、自然な勢いがあってよい。 細かいところの表現も前2曲とは違って結構彼自身の自由さ、自発性が出ている。 ただ第2楽章の歌い方は鈴木君の方が魅力的だった。 でも総合的には鈴木君よりずっとよい。 この曲も力で押す傾向はあるが、それがエネルギーという点でよい方向に向かっている感じである。
28.ヴァレンティナ・イゴシナ(ロシア)
Beethoven: ソナタ第13番 Rachmaninov: 前奏曲Op.23-7, 32-10, 25-5 Prokofiev: ソナタ第6番Beethovenは音色の変化、表情付けが上手い。堅苦しくならず、「幻想曲風」となっている。 やはり表現力は関本君より上である(曲が違うので単純に比較できないが)。 1次、2次と聴いてきてやって彼女の真価が出たという感じ。昨日のブレチャッチのBeethovenもよかったが、彼女のもそれに次ぐくらいよかった。 欲を言えば終楽章のコーダはもっとクレッションドして欲しかった(ちょっと大人しかった)。 次のRachmaniovはそれほど悪くはないが、Beethovenに比べると印象が弱い。フォルテ和音で音が飽和する感じがあるのが気になる。 最後のProkofievはもうひとつ。 第1楽章の展開部は昨日のコルチンスカヤに比べてだいぶ遅めのテンポなのだが、それでも万全という感じでない。 表現力はイゴシナの方がある感じであるが。 第2楽章は疲れが出たか細部がやや雑。 終楽章も、表現の彫りの深さではイゴシナなのだが、冷徹というか直線的な技巧のキレという点ではコルチンスカヤの方が好きだった。
36.タチアナ・コレッソヴァ(ロシア)
Schubert: ソナタ第17番 Rachmaninov: ソナタ第2番正直、もうあまり聴きたくないなと思っていたコレッソヴァである。今回も聴衆を見ないで(うつむいたまま)おじぎをする。 Schubertのこの曲は、私自身との相性が悪い上に、彼女の音楽とも波長が合わず、おまけに曲が天国的に長いときているので、正直早く終わらないかと思って聴いていた。全体的に響きが整理されていない(音がボワっとしている)。音にシマリがないと言ったらよいか。 Rachmanionvもその印象は変わらず。第2楽章の歌い方も全くセンスを感じない。 終楽章も技巧にキレがない。
66.セルゲイ・サロフ(ウクライナ)
Beethoven: ソナタ第32番 Brahms: カプリッチョOp.76-1,2 Debussy: アナカプリの丘、雪の上の足跡、西風のみたもの、パックの踊り、花火 Stravinsky: ぺトルーシュカからの3楽章Beethovenはそれほど悪くはないが、あまり好きになれなかった。 細部が雑というわけではないが、ときどき神経が行き届かないような音になることがある。 次のBrahmsの1番はなかなかよいが、2番はちょっと大人しい。もっとメリハリがあってよい気がする。 Debussyもそれほど悪いわけではないが、細かいところでメリハリが足りない(特に強弱)。 全体的にあまり印象に残らない出来。 最後のStravinskyは第1楽章の途中でいきなりテンポが揺れる(落ちる)のが悪印象。 また全体的に細かいところが曖昧になる(キッチリ弾けていない)。正直言って今年の音コンの小林さんの演奏の方が好感が持てた。 最後の方は疲れた出てきた感じ。
最初に書いた通り、以下の2人は聴けなかった。
77.須藤梨菜(日本)
35.アレクサンドル・コブリン(ロシア)
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というわけで3次2日目の6人のうち4人を聴いた。
今日聴いた4人の中では一番よかったのはそれでも関本君か。(イゴシナという人もいるだろう。)
何か、有力者が次々と脱落して(させられて?)気が付いたらいいポジションにいたという感じである。
思えば前回の3次の2日目はアミーロフ、イム、ピロジェンコ、ガヴリリュクと、ワクワクするような面子だったのだが、
今回3次の2日目で是非聴きたいと思っていたのはコブリン一人で(それも聴けなかったが)、
それを思うとさびしい。(1日目はそれほどでもないが。)
1次のレベルは前回と同じくらいだったのが、2次でガクっと下がり、3次でさらに下がったというのが私の正直な印象である。
3次全体を通して聴いて(2人は聴いていないが)、本選で聴いてみたいと思うのは以下の4人(演奏順)。
ラフアゥ・ブレチャッチ ヴィクトリア・コルチンスカヤ ロマン・デシャルム アレクサンドル・コブリンこのうちコルチンスカヤは前も言ったとおり本選の曲(Prokofievの2番)によるところが大きい。 本選は6人だが、残りの2人はもう好きにしてという感じである(ただしある2名を除いて)。
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そして実際の結果は、以下の6人が本選進出。
ラフアゥ・ブレチャッチ 鈴木弘尚 関本昌平 セルゲイ・サロフ 須藤梨菜 アレクサンドル・コブリン日本人が3人も入るとは…ホームタウン・ディシジョン(またの名を政治的配慮)もここまでくるとは、という感じである。 コルチンスカヤはともかく、デシャルムが落ちたのは残念である。