66.セルゲイ・サロフ(ウクライナ)
Tchaikovsky: ピアノ協奏曲第1番出だしは昨日の関本君よりゆったりしたテンポ(というかこれが普通)。 表情はよく付けているが、打鍵が少しナヨナヨというか、煮え切らない感じのところがある。 技術的にももうひとつ洗練さに欠ける。 第2楽章の中間部も覇気、勢いがない。打鍵が自信なさそうに聴こえる。 終楽章もA主題は多少持ち直したが、B主題はやはりもうひとつ。 弾き急ぐところもあって、オケはよく合わせたなという感じ。
77.須藤梨菜(日本)
Prokofiev: ピアノ協奏曲第3番第1楽章は速めのテンポをとるが、1つ1つの音が弱く、そのため細かいところがよく聴こえない。 また最初の方でいきなりオケとずれるところがあって心配した(が、その後はなんとか合わせた)。 強弱の幅も小さく、特にフォルテはもっとガツンといきたい。 第2楽章も第1変奏でズレるし、テンポが速くて慌しい。最終変奏の高音部の(Liszt的な)印象的なパッセージも聴こえてこない。 終楽章も(指が弱いせいか?)音が聴こえない。中間部の抒情的な部分も、オケはよく盛り上げているのだが、ピアノがあまり歌っていない。 終盤もピアノが自分勝手に突っ走り、オケもついていくのが大変そう。
35.アレクサンドル・コブリン(ロシア)
Rachimaninov: パガニーニの主題による狂詩曲最初の1音から、音が生きている。 前の二人がアレだっただけに(特に音が)、よい耳直しになる。 スピードで畳み掛けることはそれほどしないが、じっくりしっかり音を出す。 強い個性はないがツボを押さえていて、歌うべきところは歌い、ビシッとキメるべきところはキメる。 テクニックも十分。今日やっと納得のいく演奏が聴けた。
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というわけで本選2日目を聴き終えた。
全演奏を聴いてあえて私が順位をつけるとすれば以下。 ただしこれは本選だけでなく、3次を含むこれまでのすべての演奏を考慮したものである(と言っても3次を聴いていない人もいるが)。 また結果を予想したものではなく、あくまで私の好みを反映したものである。
1.ラファウ・ブレハッチ 2.アレクサンドル・コブリン 3.関本昌平 4.鈴木弘尚 5.セルゲイ・サロフ 6.須藤梨菜ブレハッチは本選はそれほどインパクトがなかったが、それまでの演奏から(本選に残った中で)今回一番印象に残った人である。非常にセンスのある演奏をする。 コブリンは1次から安定した実力を発揮。 現在の実力と本選の出来から言えばコブリンの方が上と思うが、魅力という点ではこのようになった。 関本君は1次、2次はあまりパッとしなかったが、3次から持ち前の勢いがよい方向に向いてきたという感じ。 鈴木君は個性的なのだが3次、本選と疲れが目についたという印象。
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で、実際の結果は以下の通り。
第1位: なし 第2位: ラファウ・ブレハッチ、アレクサンドル・コブリン 第3位: セルゲイ・サロフ 第4位: 関本昌平、須藤梨菜 第5位: 鈴木弘尚 (日本人作品最優秀演奏賞、奨励賞: ロマン・デシャルム) (奨励賞: ダヴィッド・フレイ)というわけで1位なしという意外な結果になった(1位なしはこれが初めて)。 ブレハッチとコブリンが最上位というのは審査員の最後の良心だったのかもしれない:-)。 (それにしても、1次、2次とあれだけ有力者を落としまくっていれば、こういう結果―1位なし―にもなるわさ、という感じである。自業自得というべきか。)
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恒例(?)の、コンクールハイライトCDに入れるならこれ!、ですが、今回もめぼしい演奏はCDまたはMDを入手(予定)済みなのでそれほど切実な意味はないのですが、一応挙げておきます。 当然、曲自体への私の好みもかなり入っています(^^)。
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というわけで今回のレポートも終わり。
今回は前回までと大きく審査の基準が変わったのか、私の好みの人があまり残らなかったのが残念である。というか審査に疑問が残った。
前回までは、日本人びいきの判定はあったものの本選6人のうち日本人枠が1人あるのでは?という疑問を感じさせるくらいのもので、あとの5人は(私の希望とは違っても)だいたいfairに選ばれてたという感じなのだが、今回はそれも感じられなくなったというのが率直な印象である。
演奏自体の質よりも、主催者、スポンサー、審査員団の思惑がより強く反映されるようになってしまったのかもしれない。
「通」の人が今回初めてこのコンクールの3次だけを聴いて、「浜コンのレベルも大したことないな」と感じることがあったとしたら、前回と前々回はそうではなかったんだよ、と心の中で叫びたいところである。
(おしまい)