***
14. Sara DANESHPOUR
Debussy: 版画より塔 Debussy: 8本の指のための Rachmaninov: Op.39-6 西村朗:白昼夢 Chopin: ピアノソナタ第2番Debussyの塔は、中間部のフォルテ和音がもうひとつきれいでないか。エチュードの方はまずまず。 Rachmaninovは左手を強調するのが彼女の特徴だが、その分右手の細かい音型の印象が弱くなっている嫌いもある。 メインのChopinピアノソナタは印象に残らないというか、平凡な出来。 技巧的にも音楽的にもあまり見るべきものがなかった。 これで音が魅力的ならまだ救われるのだが。強いて言えばときに内声を浮き立たせたりするのが目立つ程度。
64. 尾崎有飛
Liszt: 超絶第8番 Scriabin: Op.65-1 Chopin: バラード第3番 西村朗:白昼夢 Ravel: ラ・ヴァルスLisztは冒頭でいきなりミス、その後ももう一つ乗り切れずという印象。 ミスも多少あり、技巧を印象付けるというわけにはいかなかった。 Scriabinはなかなかよい。多声的な動きや音色がよく練られていて右手の連続9度もスムーズ。 Chopinはオーソドックスで模範演奏的。 さらに求めるとすれば沸き立つような詩情というところか。やや淡白である。 Ravelもよく弾けているが、どこか予定調和的で、大戦後ウィーンの退廃的な雰囲気はあまり伝わってこない。 リズムが真面目すぎるのと、音色にもう一つバラエティがないのが一因か。
31. Gintaras JANUSEVICIUS
西村朗:白昼夢 Chopin: Op.25-10 Scriabin: Op.8-12 Liszt: ペトラルカのソネット第123番 Liszt: ダンテを読んでChopinは開始からインテンポの私好みの演奏。 Scriabinも悪くないけど、昨日のCang Sungのようにもう少しヌケのよい音だとさらによいか。途中かなり目立つミスもあった。 Lisztのペトラルカは、弱音はよいのだけど強音で音が割れるようになる感がある。 最後のダンテは明らかにイマイチ。 この曲を生で聴くときに一番重視する要素である音が、汚いとまで言わないが、磨かれていない。 テクニック面でも、急速部であまりテンポが上がらず切迫感が生まれない。 中間部もかなりゆっくりしたテンポだが、それに見合うだけの音楽的充実が見られない。 コーダおよびその前のスピードの上がらなさもかなり萎えた。
29. HUH Jae-Weon
西村朗:白昼夢 Chopin: Op.10-1 Liszt: 超絶第2番 Schumann: 謝肉祭Chopinの10-1は音が大きい。メカはよいが終始フォルテで押す傾向があり、もう少し表情があってもよい気がする。 Lisztは迫力はあるが音がもう一つきれいでない。濁る感じ。(そういえば1次でもそんなことを言っていたような。) キレも特に印象付けるほどではない。 最後のSchumannは音についてはそれほど気にならず、解釈もオーソドックスで割りとツボを押さえている。 全体的に明るく健康的で屈託がない。さらに繊細さや陰影みたいなものがあるとよいと思うが。
70. Tamila SALIMDJANOVA
Mendelssohn: 厳格な変奏曲 Chopin: Op.10-2 Rachmaninov: Op.39-6 西村朗:白昼夢 Chopin: バラード第4番 Debussy: 喜びの島Mendelssohnは出だしから加藤君より音色が聴かせる。 表現力もあって退屈させない。変奏の移り変わりによるストーリーみたいなものが感じられる。 ただペダルの使い方の問題なのか音の輪郭がぼやける傾向にあり、個人的にはもう少しクリアで透明感のある音も欲しいところ。 Chopinの10-2はとても滑らか。もう少し拍子感というかフレージングを明確にしてもよいと思うが。 Rachmaninovもスケール感はさほどではないがツボを押さえて完成度の高い演奏。 Chopinのバラ4も出だしの音色がvery good。 基本は繊細系だが動きもあって音楽的。 最後のDebussyも非常に聴かせる演奏。
20. Elmar GASANOV
西村朗:白昼夢 Rachmaninov: Op.39-5 Liszt: 軽やかさ Liszt: ピアノソナタRachmaninovはもう少し繊細な音があるとよいけどまあまず。 Lisztの軽やかさも悪くない。 最後のソナタも、意外と言ってはなんだが結構まともな演奏。 ただ全体的はやはりタッチがあまり洗練されていない印象がある(どこがと言われると難しいけど。) またフガート部分はちょっとキレが弱いかなと感じた。前半部分では見苦しい弾き直しもあった。 あと演奏には関係ないけど、時間を少しオーバーすることが確実そうだったので、最後まで弾かせてもらえるのかどうかそれが気になってしまった。(結局弾けたけど。)
36. KIM Hyun-Jung
西村朗:白昼夢 Chopin: Op.25-11 Rachmaninov: Op.39-1 Chopin: ピアノソナタ第2番 Liszt: リゴレット・パラフレーズChopinの25-11は速めのテンポで昨日のOnyshchenkoよりアグレッシブな演奏。中間部の最後の方でミスった気がする。 Rachmaninovの39-1もノリというかリズムのキレがよい。右手の細かい動きがクリアに聴こえるとさらによいけど。 次のChopinのソナタが良かった。少なくともDaneshpourよりは数段優れている。 歌い回しもしっくりきているし、テクにもキレがある(特に第2楽章)。完成度も高い。 最後のLisztもよい。1次の尾崎君もよかったがそれに勝るとも劣らない出来。
***
というわけで2次の最終日も終了。今日よいと思ったのは
70. Tamila SALIMDJANOVA 36. KIM Hyun-Jung次点で
64. 尾崎有飛というところ。今日もやはり全体的には寂しい出来であった。
***
そして2次の結果が出たので、
各日の感想で名前を挙げた人(よいと思った人および次点の人)がどうなったかを以下に書いておく(○が通過者)。
81. Alessandro TAVERNA ○ 4. ANN Soo-Jung ○ 55. James Jae-Won MOON ○ ------ 10. CHO Seong-Jin ○ 63. Dmitriy ONYSHCHENKO 7. CHANG Sung ○ 32. 加藤大樹 ○ 51. Fatimat MERDANOVA ------ 70. Tamila SALIMDJANOVA 36. KIM Hyun-Jung ○
69. Ivan RUDIN ------ 64. 尾崎有飛 ○
16. Francois DUMONT 62. 野木成也 ------ 29. HUH Jae-Weon 20. Elmar GASANOV
というわけで、初日のはじめに書いたように、生で聴けるのはここまで。 3次はネットで聴くと思いますが、ライヴでは聴けないし、オンデマンドでもいつ聴けるか(聴く時間がとれるか)わからないので、レポートはいつになるかわかりません。(ずっとないかも。)
最後に今の時点での今回の全体の印象を言うと、今回もそれなりに良いと思う人はいるが、たとえば前回のHuangci、それより前のPirojenkoやTebenikhinのように、特にお気に入りという人が現れなかったのは残念だった。 また全体のレベル(というか3次出場者のメンツの充実感)も第3回をピークに徐々に下がってきているという感じである。 (思えば第3回はTarasov, Urasin, Kempf, Matsuev, Kern, Laneri, Morozov, Baxと、今考えるとワクワクするようなメンツだったな…。)