なんだかんだ言って、結局第74回日本音楽コンクールピアノ部門の本選(10月15日)を聴きに言ってきました。その感想です。

本選の課題曲は協奏曲。曲目はここを参照。

場所はいつもの通りオペラシティのタケミツメモリアル。 ちなみに今年は少し異変があって、いつもの通り当日券の指定席を開場10分前くらいに来て買おうとすると、既に売り切れ。 仕方なく自由席を買ったが、開場時には自由席も売り切れ。そのためせっかくここまで来て中に入れない人も続出していて、今までにない盛況である。(今まで当日券が売り切れたことなんてあっただろうか…?) 今日は例年より特に出場者に魅力があるとも思えないし(そう思っているのは私だけ?)、むしろショパンコンクールのライヴ放送とぶつかっているので今日は人が少ないかな、と思っていたのだが…。 それでも入場の列のほとんど最後に入ったにもかかわらず、なんとか1F左側の後ろの方の席が確保できたのは運が良かったのかもしれない。

以下、本選の全演奏の感想を。 なお番号は単に演奏順を表すもので、予選での出場者番号とは関係ありません。

1.  Schumann: ピアノ協奏曲イ短調

3次ではMessiaenやChopinのバラード第4番を弾いた男性である。
席があまりよくなかったのか、出だしからピアノの音がボワっとして厚ぼったいというか、輪郭がはっきりしない。 もう少しキリっとしたところが欲しい。 全体的に抒情的な表現を目指しているようだが、どちらかというと芯のない弱々しい印象を受ける。 (もっと良い席で聴いている人は違う印象を受けたのかもしれないが。) もう少しピシっときめるべきところはきめ、メリハリをつけるとよいのではなかろうか。 アーティキュレーションも曖昧な感じである。 また終楽章はタッチにいまひとつキレがない。
彼は3次のときもそれほど買っていなかったが、本選ではその印象をさらに強くした。

2.  Prokofiev:ピアノ協奏曲第3番

3次では最後にProkofievのサルカズムなどを弾いた男性である。去年は本選のTchaikovskyがイマイチだったが、今年は雪辱なるか。
出だしを聴いて、やっぱりここは席が悪いのかなと思う。 細かい音があまりクリアに聴こえてこない。 第2楽章になると音が伸びてきて調子が上がってきたが、ただオケと合わないところが多々あってちょっと気になる。 特に最終変奏では彼の方が先に行ってしまう感じで、意図的にオケを引っ張っているのならよいが、どちらかというオケを聴かずに勝手に走っている感じがある。第3変奏など勢いがあって悪くなかっただけにもったいない。 終楽章はまずまずだったが終盤で跳躍を立て続けにはずしたのは惜しかった。 最後のところもオケに押されてピアノの音が埋もれてしまったのも残念。(これは仕方がないのかな。)
全体的には、去年のTchaikovskyよりはよかった。

3.  Rachmaninov: ピアノ協奏曲第1番

3次ではRachmaniovの楽興の時などを弾いた女性である。
これまでの2人と違い、ピアノをよく鳴らしている。 こういう大きいホールでのピアノの鳴らし方を心得ているし、音をよくコントロールしている。 また指回りも悪くない。 ただ残念ながら私はこの曲があまり好きではない(というかピンと来ない)のであまりのめり込むことはなかった。 (3次のときもそんなことを言っていたような…。) それでも今日聴いた中では(魅力的であったかどうかは別にして)一番完成度の高い演奏であったと思う。

4.  Chopin: ピアノ協奏曲第1番

3次ではBeethovenの27番ソナタやLisztのスペイン狂詩曲などを弾いた男性である。
ピアノの出だしの和音を聴いて、これは期待できそうな感じである。彼も音がよく通っている。歌い方も自然かつ繊細で悪くない。 ただ展開部やコーダなどの技巧的な細かいパッセージがちょっと繊細すぎるかなとも思う。 個人的にはもう少し1音1音を粒立ちよくクッキリと出して欲しかった。またつまらないミスも散見された。 3次のLisztで感じたとおり、やはり指が少し弱いのかなとも思う。 そういう意味では終楽章はややビミョーだったかも。詩的で繊細な音だったけれども、もう少し明るく健康的で溌剌とした感じがあるとよいか。 逆に第2楽章は美しい音をよく響かせていて、こういうところが彼の長所であろう。
全体的に、3次と同様、いいセンスがあるのだがもう少し強靭なテクがあればよいかなと思う。

***

というわけで本選の全演奏を聴き終わった。 本選と3次の演奏を総合して*私が*順位をつけるとすれば、
 1位 なし
 2位 3と4
 3位 2
 入選 1
というところかなと思う(番号は今日の演奏順序)。今年は正直なところ特に気に入った人はいなかった。 もちろん実際にこうなるとは思えないが。

そして実際の審査結果は、以下の通り。
 1位 3
 2位 2と4
 入選 1
 聴衆賞 2
まあ理解できる結果である。 inserted by FC2 system