ラッサンの部分は狂詩曲特有のリズムのタメが少なく面白味に欠けるが、フリスカ部分の急速な走句ではペライア得意の玉を転がすような粒の揃った音がよい。特にクライマックスの32分音符のところは見事。情熱的ではなく、あくまで冷静な演奏。そこらへんが物足りない向きもあるかもしれない。
音に張り・艶があり、まさにDGの音という感じがする。ラッサンのテンポがゆったりしており、よく響く音と相まって重厚感、品格を与える。（狂詩曲にそんな品格はいらないと思う人もいるだろうが。）フリスカに入るとリズムが躍動してきてラッサンで溜めた力をうまく放出する感じ。ただ終盤の右手の32分音符はちょっとぎこちない感じもする。
技巧的な部分はキーシンらしいキレがあって申し分ない。特に細かい音型での発音がクリアなのが気持ちがよい。が、音楽的な面では（キーシンの演奏ではしばしば感じられるところだが）少ししっくりこないところがある。前半のラッサンではテンポをかなり遅めにとって重々しさを出しているのだが、重いだけでなにかノッこないというか、リズムの伸縮の具合がもうひとつツボにはまっていない（洒落っ気が足りない）感じがする。
キーシンとは逆に狂詩曲らしい表現がなかなかツボにはまっている。緩急自在といった感じで、多分にくずしが入った名人芸的なリスト（やや下品ではあるが）。その意味でカッチェン、シフラと同系統の演奏。流れを大切にしているだけに、細かい部分では多少不明瞭になることもないではないが、割り切って聴けばそれほど気にならない。
全体的にオーソドックスで悪くない。表現は下品過ぎず、真面目過ぎず、ちょうどよいツボを押さえている。技巧も、特に凄いというわけでもないが全体的にまずまず。いい意味でも悪い意味でも優等生的演奏。
他の曲ではテンポの揺れが気になるカッチェンだが、こういうラプソディックな曲だとそれほど気にならない、というか却って曲想にマッチしている。全体的に技巧というか指回りも冴えている（速すぎて怪しいところもあるが）。名人芸的（必ずしも誉め言葉でない）な演奏。
狂詩曲とは本来こういうものだとは思いつつ、こうテンポがころころ恣意的に変わるというか自由にアゴーギグをつけられるのはどうも私の趣味に合わない。前半などはシフラにしては意外におとなしい演奏だが、コーダではやっぱり「シフラ節」が出てきて苦笑してしまう。
全体的に軽量級というか音が軽い（録音のせい？）。技巧はまずまずしっかりしているが、最後の方でリズムが重いというか躍動感がもう少しほしいところ。まだ曲が完全に自分のものになってないという感じ。
技巧的にはなかなかいいものを見せるところもあるのだが、ライヴだけに細かいところなどでやや完成度が低い。クライマックスの右手の32分音符の粒の揃い方もイマイチ（技術的には後年DGに入れたスタジオ録音の方がずっと良い）。全体的に表情を付けすぎというか、もったいぶった感じがする。
全体的におとなしく淡々とした演奏。テンポもかなりゆっくり目で、気の短い人ならイライラするかも。技巧もいまひとつパッとしない。
技巧的にかなり見劣りがする。特に終盤の32分音符はかなり遅めのテンポ（このため音型がよくわかって実は結構面白い）なのにぎこちない。こういう狂詩曲なら、ある程度自由なテンポで弾けるので技巧の無さがそれほど目立てなくて済むが、他のもっとエチュード的な曲ならもっと露になるなりそう（実際他の収録曲でそうなのだが）。出だしの低音トレモロがやけに長くてもったいぶった感じだが、下手でそういうことをやられると余計に心証が悪い。