リスト ハンガリー狂詩曲第2番
- コルタコフ(Cambria<95>L)(ホロヴィッツ編)(8:15)◎
ジャケット→
'95年キエフ国際(第1回ホロヴィッツ記念)コンクールライヴ。
全体的に速いテンポで進むが、アゴーギクに巧みな緩急を織り交ぜており、ラプソディックな雰囲気がよく出ている。
特にラッサン部がチンタラし過ぎない(サクサク進む)のが私好み。
フリスカ部も若者らしくストレートで、手練手管という感じはないが溌剌として清々しい。
迫力も申し分なく(もちろんスルタノフほどではないが)、ライヴにしては音も充実。
同じホロヴィッツ編と比べると、ヴォロドスは精度はピカイチだが行儀良すぎ、スルタノフはちょっとやり過ぎ&音割れ、ということでバランスが良い。
(そもそもホロヴィッツ編を原曲と同じ土俵にのせるのはフェアでないかもしれないが…。)
ちなみにこのとき彼は第2位。
- アムラン(Hyperion<96>)(11:30)◎
解釈は模範的、技術的にも洗練の極みで非の打ち所がないが、聴き所は何といってもカデンツァ。
3分を超える長さも異例だが内容も彼らしい技巧を駆使したものでブッとんでいる。
リストというよりは、その偏執狂的なところ(というかイっちゃっている具合)がアルカンを思い出させる。
ただその前のフリスカ部などではここぞというところでもあまりガツンといかずにサラっと流れる嫌いがあって、もう少し羽目をはずしもいいと思うのだがあくまでスマートなのが彼らしい。
- マツーエフ(BMG<2003>)(9:12)◎-○
ラッサン部は割合オーソドックスだが、フリスカに入ってからは機関銃のような同音連打や左手のアクセントなど、持ち前の技巧を生かした猛進ぶりを発揮している。
自作のジャズ風(というより完全にジャズ)カデンツァも面白い。
もちろん様式違反ではあるが、この第2番(特にフリスカ)はあまり真面目腐って弾くより、祭りのごとく楽しむショーピースであるというのが私のスタンスである(それを支える技術の裏づけがあることが大前提であるが)。
「Tribute to Horowitz」と題するCDなのになぜかホロヴィッツ編曲版を弾いていないが、なるほど聴いてみれば原曲でありながらホロヴィッツ版のspiritをよく表していると言える。
- スルタノフ(プライベート録音<2000>L)(ホロヴィッツ編)(7:55)◎-○
音の迫力というか凄まじさの面では一番。ピアノが壊れそうなまでに弾きまくり、
スルタノフ節全開と言っていい。
マイクの限界を超えているのか、強音で音が割れている(というか割れっぱなし)なのが残念。
また勢い重視で細部の精度は多少犠牲になっている。
ホロヴィッツ版を弾いた中ではヴォロドスと対極的な演奏。
- ホロヴィッツ(Archipel<53>L)(ホロヴィッツ編)(8:25)◎-○
全体的にやや荒っぽく、技巧の精度は実はそれほどでもないのだが、迫力、演出の上手さはやはり一聴の価値あり。
カデンツァの畳み掛け方もスルタノフ盤以上。
実は古くからあるRCA盤(同一音源)でこの演奏を聴いたときは音質がショボくてあまりピンと来なかったのだが、この盤では音の広がり、臨場感などぐっと改善され迫力がよく伝わってくる。
(RCA盤でもその後リマスタリングされてもっと良くなっているかもしれない。)
ただ多少音がキンキンして聴きづらい面はある。
- クズミン(Russian Disc<92>)(10:07)◎-○
技巧が冴えている。緩急の付け具合も自在で、
普通の曲ならばちょっと考え物だが、ラプソディーならこのくらいやっても許せる。
ただフリスカ部ではもう少し音ギレをよくした方がよいと思うところもある。
カデンツァはラフマニノフのものを使用。
シドンやソエリャディ盤を楷書とすればこちらは行書か草書。感性の赴くままに一気に書いたような雰囲気がある。
- ブレンデル(Vanguard<68>)◎-○(10:26)
芸が細かい。
フリスカの同音連打にも表情を付けたり、タッチに変化をつけたりと、
とにかくイケイケになりがちがこの曲でここまで細部までよく考えている演奏はあまり聴かない。
目を見張るような技巧はないが技術も確か。
ラッサン部もゆったり目のテンポだが緩急を上手くつけて単調にならない。
自作?のカデンツァも入れている。
見た目の華やかさはないが玄人受けする演奏と言えそう。
音質も録音年からすると結構良い。
- ヴォロドス(Sony<96>)(ホロヴィッツ編)(9:59)○-◎
演奏精度が恐ろしく高い。
テクニカルな精度ではホロヴィッツ版を弾いた中ではもちろん、すべての演奏の中でも最高レベル。
あらゆる音がコントロールされていて、この曲にありがちな勢い任せとは無縁。
ホロヴィッツの書いた(弾きたかった)音符が1つ1つクリアに聴こえる。
ただ音は精確だがホロヴィッツのspiritからは遠いところにあるかも(善いか悪いかは別として)。
またラッサン部はあまりテクニカルな見せ所がないせいか持て余し気味でちょっと退屈。
- ディヒター(Philips<80>)(8:52)○-◎
解釈はオーソドックス、技術的にも安定していて、ある意味模範的演奏。
この曲を初めて聴きたいという人には(変な刷り込みが起きないという意味で)一番お薦めできる盤かもしれない。
その代わり強い個性あるいは毒のようなものはない。
カデンツァはほんの短いものを入れている。
またラッサンの終わりにもパッセージを追加している。
- バルト(EMI<88>)(10:45)○-◎
バルトらしい個性的演奏。
ラッサンは重々しく開始するが、いきなり即興的なパッセージが入っていて意表を突く。
ラッサン部ではそれ以外にもカデンツァ的パッセージをところどころに追加している。
また場面によって表情をサッと変えるのが面白い。
フリスカは出だしの同音連打が超スローテンポ。
それ以後は普通のテンポに戻っていくが、途中でノンペダル気味の乾いた音にしたり、タッチを変えたりといろいろ変化を付けている。
ただ、ここぞというところもそれほど加速しないのはちょっと物足りないか。
カデンツァも入れているが、トレモロ主体の短いもので、ここはもう少し派手にやって欲しかった(他ではあれだけ加筆しているのに)。
- ソエリャディ(Philips<91>)(9:04)○
真面目で格調が高い。特にラッサン部は見本のような演奏。
また音が非常に充実しているのが魅力的(録音が良い?)。リストらしい輝きのある音。
ただ格調は高いがちょっと面白みには欠けるかも。
特にフリスカはやや優等生的気味で、もう少しスピード感を出して欲しいところもある。
カデンツァは無し。
- シドン(DG<73>)(9:10)○
ラッサン部の格調が高い。重厚さと気品を兼ね備えていると言ったらよいか。特に弱音の使い方が秀逸。
ドイツロマン派の曲を聴くような趣がある。
フリスカも丁寧で、下品な表現には決して手を出さない。ただ、ここぞというところはもう少し加速感があってもよい。
この時代のDG録音らしくピアノの音も美しい。
というわけで全体の印象がソエリャディ盤にかなり似ている。
カデンツァはトレモロだけの短いもの。
- コルトー(Pearl<>)○-△
音質は悪いが、演奏は味があって聴かせるものがある。歌い方にセンスがあり、
特にアゴーギグが上手い。
ゆったりしたテンポから急に加速するなど意外性があってラプソディック。
フリスカもテンポが速く技術的に現代と遜色ない。(コルトーも昔は技巧派だったという話もわかる気がする。)
ただ(一発録りのせいか)多少細かい瑕はある。
カデンツァはダルベールによるもの。
- シフラ(EMI<68>)(9:01)○-△
意表を付くアゴーギグ、突然(意味もなく?)クレシェンドするなど、
ラプソディーというよりはシフラ節になっている。
また(いつものことながら)打鍵が荒っぽいというかブっ叩く。(もう少し洗練されているとよいのだが…。)
意外にもカデンツァは弾いていない。
- シフラ(Hungaroton<56>)(10:08)○-△
EMI盤と同様の演奏だが、大きな違いはラッサンでぐっとテンポを落としていること。
神妙というか厳かな雰囲気を醸し出している。
フリスカでのハジけ具合はEMI盤と同様だが、細部の表現は多少異なる。
カデンツァはやはり無し。
音はEMI盤の方が多少良い。
- モイセイヴィッチ(Naxos<40>)(9:31)○-△
演奏はそれほど悪くないが音がイマイチ。聴きづらさはそれほどないのだが、
特に低音が弱いので重厚感があまりない。
解釈はオーソドックスで清潔感がある。ただラッサン部は真面目だがちょっとタルい感じもある。
短いがお洒落なカデンツァを入れていて、実はここが一番の聴き所かも。
- ラフマニノフ(Piano Library<19>)(10:28)○-△
録音年から推察される通り、音質はかなり悪い。
ラッサン部の歌い方に独特のセンスが感じられる。
また後半の繰り返しでは音を変えて弾いているところがあり、一瞬、ハッとする。
フリスカ部はそれと比べるとやや平凡。最初の同音連打が粒の揃いがイマイチ。
自作のカデンツァを弾いている。
- O.カーン(HMF<2003>)(11:48)○-△
丁寧でまとまっている。
フリスカも技術的によく弾けてはいるが、もう少しアクがあってもよいか。やや優等生的。
ラフマニノフの曲をまとめたCDということで、カデンツァにラフマニノフによるものを使用。
またラッサンの後半でラフマニノフと同様に音を変えている。
そのラッサンは遅めのテンポだがやや型にはまった感じで、この語り口はラフマニノフの方が一枚も二枚も上手。
- オグドン(RCA<72>)(9:04)△-○
ラッサンでの歌い方に今ひとつセンスが感じられない。
フリスカに入ってからはいつものようにスピードの限界に挑戦するかのような爆演ぶりなのだが、音が汚いせいかあまり感心しない(録音がイマイチせいもある?)。
技術的精度ももうひとつ。
ただカデンツァは短いがなかなか面白く、もっと長く入れて欲しかった。
- ギンズブルク(Philips<47>)(8:37)△-○
オーソドックスにまとまっているのだが、いかんせん音が悪い。
フリスカでは特定の音にアクセントを付けるあたりにこだわりが感じられる。
短いカデンツァあり。
音がよければもう少し高い評価になるのかもしれないが…。
- L.ケントナー(apr<37>)(9:01)△
これと言った特徴はないが、解釈に多少古めかしさを感じないでもない。
悪い演奏ではないが、音質を考えると積極的に聴こうと思わせる魅力を見出すのは難しい。
カデンツァなし。
- ボロフスキー(Pearl<37>)(8:40)△
ラッサンはあっさり味。
フリスカも(あるいは録音のせいなのか)迫力には欠けるものの軽いタッチでそれほど悪くは無いが、
これも音質を考えるとあまり積極的に聴く気にはなれない。
カデンツァなし。
- 江口玲(NYS<2002>)(ホロヴィッツ編)(10:08)△
ホロヴィッツのピアノを使用しており、時代楽器のような音がする。
ラッサン部分はかなり遅めのテンポだが、歌い方が通り一遍で停滞した感じ。
遅さに見合う音楽的密度、あるいはコクが感じられない。
フリスカも全体的にのんびりしたテンポで、丁寧というより安全運転。
指回りもあまり流麗ではなく、ホロヴィッツ版を使うならもう少し余裕シャクシャクで弾いて欲しい。
- フィオレンティーノ(apr<66>)(9:50)△
ラッサン部はかなり遅めのテンポでじっくり、というか終盤などはちょっと勿体付けすぎ。
フリスカは普通のテンポでストレートな演奏だが、同音連打で粒が揃わないなど技術的にやや難あり。雑っぽいと言ったらよいか。
音質も'66年録音にしては悪い。
カデンツァ無し。
- ヤンドー(Naxos<97>)(10:41)△
ラッサンはゆったりテンポでちょっと退屈。
また(バルト盤ほどではないが)パッセージの追加を行っている。
フリスカもスピードがあまり上がらずキレに乏しい。
カデンツァ前の16分音符のスケールが入るところなども、どこかぎこちない。
また全体的にあまり細部まで磨かれておらず、(多録音なピアニストであることを思うと)適当なところで妥協したという感じがしてしまう。
カデンツァはごくごくシンプルなもの。
- チズマロヴィチ(Arte Nova<2003>)(10:03)△
とりたてて悪いところはないが、こぎれいにまとまっている以上の印象は受けない。
丁寧ではあるが覇気がないというか。ラプソディーらいし感じがない。
ラッサンも感情を込めてゆったり弾いているつもりなのだろうが、ダラダラした感じ。
カデンツァもなし。
デビュー盤の(しかもトリを飾る)曲であればもう少しアピールしないと。
未記入盤
- ラーベ(Dorian<97>)(13:43)
- ピサロ(Brilliant<2005>)(10:45)(ブログ記事)
- ブロッホ(boheme<2002>L)(10:50)(ブログ記事)
- クズミン(Melodiya<>)(10:55)(ブログ記事)
- ベルッチ(accord<2005>)(10:06)(ブログ記事)
- J.ナカマツ(HMF<2005>)(9:37)(ブログ記事)
- ナジャーフォヴァ(Delos<2006>)(8:50)(ブログ記事)
- G.コッポラ(Caliope<>)(10:24)(ブログ記事)
- H.Zhang(Haenssler<2011>)(ホロヴィッツ編)(10:39)(ブログ記事)
- ベルッチ(accord<2011>)(10:13)(ブログ記事)
- Huppmann(Gramola<2013>)(9:50)
- Filipec(Goran Filipec Productions<2012>)(9:21)
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