デビュー盤と言えば、グールドのゴルトベルク変奏曲、アルゲリッチのDGデビュー盤(Prokofiev, Liszt, Ravel等)、ポリーニのペトルーシュカ三楽章他(DGデビュー盤)あたりが特に有名だが、私の好きなピアニストで言えば、
デビュー盤にそのピアニストの良さが一番表れる理由は、(もちろん最初ということで気合が入っていることもあるだろうが、)その人が若い頃に先生から厳しく叩き込まれ、隅々まで磨き上げられ、多くはコンクールのために入念に準備し、そこで高い評価と自信を得て十八番となった曲を集めているからであろう。 十代で身に付けた曲はその人の一生のレパートリーになると言うが、 逆にある程度年を取ってから覚えた曲は(先生から厳しくレッスンされることもないからか)どこか独りよがりか、あるいは妥協が入って詰めの甘い演奏になってしまうことが多いように思う。 若い頃に鮮烈なデビューをした人がその後CDを出すたびに長期低落傾向に陥ることが多いのも、新しいレパートリーを録音せざるを得なくなるからであると私は睨んでいる。(アムランのように出すCDがすべて高水準にあるというケースは珍しい。)
デビュー盤はなるべく買うようにしている私でも、その人をよく知らない以上、やはりある種の「賭け」である。 (最近はネット試聴という手もあるが。) 収録曲が趣味に合わなかったり、値段が高いものはやはり二の足を踏む。 2枚組、3枚組となったらよほどの確信がない限り手が伸びにくい。 その意味で、廉価盤、かつ複数の作曲家によるオムニバス盤(これだと聴きたい曲が1つくらいは入っている)などは躊躇が少ない。 EMIのDEBUTシリーズやNaxosの新進演奏家シリーズ、HMFの'Les Nouveaux Musiciens'シリーズなどはその意味で非常に良い企画と言える。 (逆に日本のレーベルなどはポッと出の新人のデビュー盤でもキッチリ\3000とることが多く、敷居が高いことこの上ない。) 他のレーベルでもどしどしやってもらいたいものである。
またデビュー盤で陥りやすい罠として、ライヴに比べて慎重になり過ぎるせいか、行儀が良すぎるというか、ある種の「活きの良さ」が失われることである。 ガヴリリュクのデビュー盤もその傾向にあったし、最近では田村響君のデビュー盤も(浜コン時の演奏に比べると)どこか借りてきた猫のようで彼の魅力が十分に出ていないように感じた。 その点、(デビュー盤とは少し違うが)コンクールのライブ盤というのもそのピアニストを最初に知る上では格好の録音である。 恐らくそのピアニストのその時点での最良の演奏が(瑕はあっても)収録されているし、たいていはオムニバス形式である。 ヴァン・クライバーンコンクールなどはコンクールCDをマメに出しているようだが、他のコンクールももっとライヴCDを出してくれると嬉しい。
というわけでデビュー盤について思いつくことをつらつらと書いたが、このようにデビュー盤に注目している人もいるので、是非ともそのピアニストの最高のものを出すとともに、そのようなチャンスを多くのピアニストにあげてもらいたいものである。
(2004/11/14)